誰もいない廊下を歩く。
少し友達の手伝いをするつもりが思いのほか話が弾み、気付けば結構な時間になっていた。
本当はそれもまだまだ終わりそうになかったけど、手伝わせちゃってごめんねって先に帰らせてくれた。
鞄を持って、なんとなく窓から外を眺めてみたり。
ゆっくり歩いて下駄箱に着くと、壁にもたれ掛かって下を向く祐希くんを見付けた。



「悠太くんたち待ってるの?」



私がそう聞けば「いえ違います」ってすぐに返ってくる。
え、じゃあ何で…って私が首を傾げると、祐希くんは持っていた辞書を私に渡した。



「千鶴が辞書返しておいてって」

「あ、そっかうん、ありがとう、わざわざごめんね」



下を向いたままの祐希くんは今日はいつもとは少し違うような、なんかよくわかんないけどそんな気がした。
そのまま二人で一緒に帰る。
最初こそ戸惑っていたけど、偶然会ったり何だかんだで何度か一緒に帰ったりするうちにこれが普通になってる。
慣れ、ってすごいな。



「今日は遅かったんですね」

「友達の手伝いしてて。祐希くんは?」

「…今日は部活でした」

「部活……あ、漫研だっけ」

「一応」



祐希くんから部活っていう言葉が出るのが新鮮だった。
そういえば漫研入ってるらしいよって聞いたことある気がする。
見た目によらずオタクな祐希くんは、それを隠さないところが彼らしくていいなって思った。

ゆっくりと歩く道。
祐希くんはいつも私の歩く速さに合わせてくる。



「漫研って何してるの?」

「漫画読んだり、描いたり」

「え、漫画描けるの?すごいね、」

「や、俺は描きませんけど。下の子とか他の子は描いてるみたいです」



そっか、と笑えば「はい」って返ってきて、会話はいつもみたいに途切れ途切れ。

もうすぐ私の家と祐希くんの家の分かれ道。
ゆっくり歩いてそこまで行って、私は「じゃあ、」といつもみたいに小さく手を振る。
反対側に歩き出そうとしたとき、祐希くんの手が私の腕を掴む。
びっくりして振り返ると、いつもと同じ、何を考えているのかよくわからない表情でじっと私を見ている。



「どうしたの?」

「……――――あの」



ギュッと握られた右腕、その部分が熱くなるのが分かった。




こくはくされる


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