塾の実習の日。今日は少し山奥にいる実験用の小さな悪魔を捕まえる内容で、荷物が詰め込まれたリュックを背負いながら山を上る。



「大丈夫か?」

「ん、まだ平気」



一人元気な奥村くんは浮き足だった様子であっちやこっちをウロウロしている。先陣を切っている彼を見て皆呆れるのだけど、ふとした瞬間に彼は私のところにやって来て大丈夫か?やら荷物持とうか?だの、余り彼らしくない心配をしてくれる。気持ちはすごくありがたいけど、私一人だけそんな風に甘えたりするのって絶対に良くない。何度もやって来る奥村くんに大丈夫だから、と伝えると口を尖らせて先に歩いていった。



「持ってもらえばええのに」

「いいよ、別にそんな立場の人間じゃないし」

「お前ら付き合ってるんか?」

「そんなわけないよ」



勝呂くんの問いに私が苦笑いで返せば、何故だか志摩くんや三輪くん、しえみちゃんまでもが反応を返してくる。そもそもどうしてそんな思考に辿り着いたのか、それがもうよく解らない。
それから少し歩くと目的地の広場に着いた。荷物を下ろしてまずはお昼ご飯。今日は皆各自でお弁当やご飯を用意してくるよう言われている為、私も鞄から昨日買ってきたパンを取り出した。隣に座った奥村くんも自分のお弁当を膝に乗せる。



「今日はパンなのかよ」

「作るの面倒臭くて」

「何だよ言ってくれれば作ってきたのに」

「そこまでしてもらう理由ないし」

「ついでだよついで、どうせいつも雪男の分も作ってるし」



確かに奥村くんは料理上手だ。女子として、何だか負けたような気もしなくはないけど奥村くんの料理が美味しいことは知ってる。作ってきてもらったことこそないが、分けてもらったことなら何度もある。将来は祓魔師なんかよりもどこかのコックさんにでもなった方がいいんじゃないんだろうか、ってくらいの腕前だ。
そんな私たちをじっと見つめるのはさっきの三人に加え、杜山さんに神木さん。え、そんな見られるくらい私なんか変なことしてる?と皆を見渡す。



「…自分らもう付き合うたらええやん」

「何でそうなるの」

「見とってイライラする」

「…え、なんかごめん」

「謝られると余計腹立つ」



えええ勝呂くん今日いつもに増して意味が解らない。お弁当をガツガツ掻き込む勝呂くんに苦笑いを浮かべた志摩くんも、ちょっと他の場所でやって欲しいわ〜なんて言い出すし。ポカン、な私と全く気にしてない奥村くん。神木さんも溜め息だし、杜山さんは…ニッコリ笑った。



「仲良しだね」

「うん、まぁ…」

「恋人同士みたい」



固まった私と笑い出す奥村くん。ちょっと意味がよく解らなくてそんなんじゃないよと返せば、皆ははいはいってお弁当を食べ始める。え、本当にちょっと意味がわからない。何故だか隣で笑い続ける奥村くんに少し腹が立って肘で腕を押してやれば、ニヤニヤする志摩くんが目に入ってもう大人しくご飯食べようと食べかけのパンにかじりついた。


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