数時間前に降り立ったのは自然豊かな町だった。私は相変わらず留守番だったわけだけど、彼らは買い物をしようと意気揚々と町に入っていった。治安も良いし物価も安いし、とルンルンで出ていったナミを始めとする他の皆。
「でっけェ動物がいてよォ、大変だったんだぜ!」
帰ってきた皆は何故かボロボロで、サンジとゾロは巨大な動物の肉を引き摺ってきていた。いつもより少し高めの声で、私の膝に乗っているルフィは帰ってきたら何故だかとても小さくなっていた。今も島で何があったかを必死で説明してくれている。こんなことあるんだなぁって感心しながら、私は膝に乗る小さなルフィのサラサラの髪の毛をそっと撫でた。
「騙された!完っ全に騙された!」
ナミはかなり苛立っているらしく、何度も何度も騙されたと繰り返している。サンジやゾロ、ウソップも疲れたように椅子にダランと座り、チョッパーも床に寝っ転がっている。ロビンは傷だらけだけど私の傍に座り、小さなルフィと私を交互に見やり微笑んでいる。何か皆かなりお疲れのようで、私はルフィを椅子に座らせて皆の分の飲み物を用意をした。皆よっぽど疲れているらしい。机に人数分のお茶を用意すると皆勢い良く飲み始めた。
「すまねェなァ…本当なら俺がやるべき事なのに…」
「ううん、気にしないで」
「出来ればもう一杯入れてくれ…」
ウソップの言葉に頷き、冷たいお茶を空のコップに注いだ。いつでも飲めるようにお茶が並々注がれた容器を真ん中に起き、私はまたさっき座っていた場所に座る。聞いてくれよ!と力説するルフィを再び膝に乗せると、まるで子供を抱いているような感覚に少しだけ頬が緩んだ。
「…一応言っておくが、“ソレ”はルフィだからな」
「…うん、?」
ゾロが指差したのは私の膝に乗るルフィで、私も彼がルフィだってことは勿論わかってるし、ゾロが言いたいことがよく解らなくて首を傾げていると困ったように頭を掻いた。
すぐに無くなるお茶。入れ直さなきゃとルフィを持ち上げ、た…――その時。
「…っ、!!?」
「うおいッ、」
「お。あれ?」
突然重くなったルフィが私の方にのし掛かってくる。意味が解らない私はそのままルフィの下敷きになり、その場にしりもちをついた。イタタ…と瞑っていた目を開け少し見上げると、目と鼻の先にルフィの顔がある。ビックリして小さく声をあげると、なんだどうした?と更に顔を近づけてくる始末。
「もうっ、何やってんのよ!」
「おいおいルフィ…」
「言ったこっちゃねェ…」
サンジによって引き剥がされたルフィは頭を掻いて何だよ〜なんて口を尖らせている。ゾロが差し出してくれた手を掴むとそのまま引っ張りあげてくれた。
「アホだろ」
「…そんなこと言われても」
「クソマリモ、レディに向かってアホとか言うモンじゃねェよ」
「……アホだろ」
そんなこと、言われても。いやまぁ確かに少し油断しすぎたかもしれないし、けどこんなにすぐにもとに戻るとも思ってなかったし。とりあえずごめんなさいと謝ると、サンジもルフィも、ついでにナミも溜め息。
「取り敢えずみんなシャワーでも浴びて綺麗になりましょ。話はそれから!」
「何があったか、貴女も聞きたいでしょう?」
私が大きく頷くとロビンは綺麗に笑って見せた。私はチョッパーと一緒に皆の傷の手当てをして、それからこの島で起きた事件と冒険の話を聞くのだ。
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