「あー暇だああああああ」



船内に響き渡るルフィの声に、皆は小さくため息を漏らした。
ここ数日はずっと船で過ごしている。近くに降り立つような島や町がないのと、いつも起きるような騒ぎがないのも私達が暇をもて余している理由だろう。海獣いねェのかーと海を覗き込むルフィとウソップとチョッパー。よっぽど暇なんだろう。



「あーうるさい。だけど本っっ当に暇だわ」

「あら、平和なのは良いことよ」

「そうなんだけど、もうずっとこんなんだから流石に飽きるわよ!」

「じゃあこれでも読んでみれば良いんじゃないかしら。面白いわよ」

「…パス!無理!何、ロビンいつもこんなに難しい本読んでるの!?」



ペラペラと捲って即座に諦めたナミは、傍にいた私にその本を渡してくる。分厚くて高そうな本だ。タイトルの文字は横文字で、文字っていうより記号みたいな…なんかよく分からない本。私もナミみたいにペラペラと捲ってみるが、そこにはタイトル同様よく分からない記号や文字の羅列、たまに入ってくる絵なんか見てもサッパリだ。パタンと本を閉じて、私は背中を海にして船に寄り掛かる。皆に冷たいジュースを配っているサンジが最後に私に手渡してくれて、それから私の隣に胡座をかいた。



「読書か?」

「ロビンの本なんて難しくて読めないよ」



ペラペラっと私が本を捲ると、サンジも興味津々で覗き込んでくる。ぴったりくっついた肩、それからサンジの髪がサラサラッと私の視界を流れていく。それにしても近いな、なんて思ってたらサンジがある場所を指差した。



「これウソップだろ」

「…似てるね」



サンジが指差したイラストは日本で言う坂本龍馬的な人なのかは分からないけどそんな感じで、鼻や髪型、帽子までウソップそのもの。二人で笑っていると仲いいなぁお前らってウソップがジュースを飲みながら笑っていた。その姿が更に写真と同じ格好で、私とサンジはまた笑うのだった。
特製のジュースを飲み干してコップを片付けるべく立ち上がる。サンジが俺が持ってくと言ってくれたけど私も動きたかったし大丈夫と言ってキッチンに向かった。ついでにいくつかのグラスも洗って、船内にある横長の椅子に座って眠っているゾロの隣に座った。グッスリ眠っているようで全く動かない。座ってみたけど特にする事がない私は、キョロキョロしたり机に置いてあるナミのであろう地図を見てみたり。隣で誰かが寝てると眠くなるなって小さく欠伸をすると、フッて笑う声。ゾロを見てみると目を開いて私を見ながら笑っている。



「起こした?」

「お前が来た時にゃあ起きてたぜ」

「…寝たふりとかさ、」

「拗ねんな」



笑ったまま大きく伸びをして、ゾロも私と同じように机に肘を乗せる。腕に顎を埋めて一度大きな欠伸をして私が手にしている地図を見た。確かゾロって方向音痴なんだっけ、と思い出すとそんな風には見えないのになっていうのと、ギャップっていうのかなぁとかそんな事を考えているとゾロが私を見上げていた。



「見てもわかんねェだろ」

「ゾロもでしょ」

「一緒にすンじゃねェ」



肘で私の肘を押すゾロは何だか子供っぽい。笑う私を見て笑うなって言いながらガッチリした肩で私を押した。
バタンッて扉が開く音にビクッて肩を跳ねさせてそっちを見ると、ルフィが口を尖らせて私たちを見ている。なんだよってゾロが聞いたら拗ねたようにルフィが言う。



「暇!!」



みんなそうだよって言うとフラフラッとやって来たルフィが私の隣に座ろうとする。私がゾロの方に寄るとルフィも座れるようになった。暇だ暇だ言いながらルフィは机に顔を乗せ、私の腕を突っついたり引っ張ったり、まるで子供のような反応。



「オメェら仲いいなァ」



空いていたドアから私たちを見たウソップが、ついさっきも聞いたような台詞を残してそのままどこかへ歩いていった。


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