朝起きるのはいつもよりほんの少し遅かった。船内が静まり返っているのは今朝早くに到着した島に皆が降り立っているからだろう。珍しいものを数多く取り揃えているらしく、ナミもチョッパーもウソップもルフィもサンジもロビンも、昨日からみんな楽しみにしていたようだ。私は勿論、いつも通りに留守番。今回はゾロも新しい刀を見に行くらしく、なるべく早く帰ってくるからと言ってくれた。気遣いなんかいらないのに、やっぱりゾロは凄く優しい。
恐らく一人であろう、ってことは分かってる。お腹空いたなぁって、めいっぱい伸びをして欠伸をしながらキッチンに足を進めると、そこに居るはずのない人物とバッチリ目があう。欠伸をした口を急いで隠した。



「おはようむーちゃん」

「…おはよう」



フッと笑ったサンジ。欠伸姿バッチリ見られちゃったかな、って恥ずかしくなりながらも気にしないように私の“どうしてここにいるの”っていう疑問を投げ掛ける。私一人じゃ心配だったからさっさと買い物済ませて帰ってきた、んだって。もしもサンジが私の生まれた国に居たとしたら、勘違いしちゃう女の子は後を絶たないと思う。



「腹減ってねェか?」

「あ、うん…お腹すいた」



そっと椅子を引いてくれたサンジに甘えて私はそこに座らせてもらう。すぐに湯飲みに入ったお茶を持ってきてくれて、私はありがたくそれを頂いた。ナミやロビンには紅茶なんだけど、私にはいつも飲みやすいようにと普通のお茶を持ってきてくれる。何を言ったわけでもないけどサンジはいつも私を見てくれてて、苦手な物にも気付いてくれる。目の前に出された料理も何処かの喫茶店で出されていそうなモーニングメニュー。食べやすそうで食欲を注ぐ香りだった。
…なんだかまるで、どこかお嬢様にでもなったんじゃないかって。嬉しいけど私みたいな奴にはどうしようもなく贅沢だなって思った。



「サンジはもう食べたの?」

「いや、俺ァ後で食うつもりだ」

「…せっかくなんだから一緒に食べようよ」

「まだ作ってねェし、レディが食べるの待ってるさ」

「え、じゃあサンジの分作るの待ってるよ、一人で食べるの淋しいし」



私がそういうとサンジは一瞬、大きな目を更に大きく開き、今度はその目を細めて“敵わねェなァ”とキッチンに向かった。私は椅子でに座ってその様子を眺めている。手際の良さとか、姿勢もよくてシャツも捲ってて、なんか料理をしてるサンジってすごく格好良い。ジッとその姿を眺めていると一瞬目があってフッと笑った。恥ずかしくなった私は目を逸らした。



「んじゃア、いただきますか」

「いただきます」



わざわざ作りたての温かい方を私の前に出してくれて、私の前で少し冷めている料理を自分の方に引き寄せる。ここまで気遣いしてくれるなんてやっぱりサンジはとっても紳士だ。
手を合わせて一緒にいただきます。一口食べるとやっぱり凄く美味しい。例え同じ材料で同じ作り方をしたとしても、きっと私には同じものは作れないだろう。私が食べる姿を見たサンジもフォークを持って食べ始めた。



「サンジと結婚する人は幸せだろうね」

「…や、どうした急に」

「素敵な旦那さんになりそう」



私の唐突な発言に一瞬止まったフォークを口に運んだ。その口元は笑っている。だけど私は嘘言ったつもりもないしおだてているようなつめりもない。料理も出来てこんなにも女性に優しい旦那さんなら、きっと夫婦生活も円満に過ごせると思う。



「ンじゃ、俺と結婚しますかレディ」

「あんまりそういう事言わない方がいいよ、みんな本気にしちゃうから」



私がそう言うとサンジはまた笑うのだ。私さっきから何か変なこと言ってるかな、って疑問に思いつつ最後の一口を放り込んだ。ちなみにサンジはもう食べ終わっている。



「洗い物は私がするね」

「いや、置いといてくれりゃあ俺がする。レディはゆっくり休んでてくれ」

「レディだからしなくちゃだよ、だから今日は私がやる!」


意気込んだ私を見て、サンジは今日この短い間に何度目か分からない笑顔を浮かべた。拭くくらいはさせてもらおうかな、と隣に並んだサンジは、今日はいつも以上にご機嫌な様子だった。






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王子なサンジは書けん…途中からリクエスト放棄←

“紳士になりきれないサンジ”をテーマにしてみました。主人公に振り回されてるのもいいですよね、とか言ってみるけどリクエストに添えずすみません…


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