今日も誰より早く起き、レディの為の朝食作り。栄養や見た目、味付けのバランスを考えつつ食料庫を見る。こないだ捕まえた海獣の肉や町で買ったばかりの野菜がまだたんまり。これだけあれば栄養たっぷりの料理が作れる。ルフィやマリモの食欲を考えたらこれでいつまで保つかは分からねェが。よく食うのは良いことだが、貧乏海賊団である限り正直ツラいところもある。結局そんなの気にしたって仕方ねェし、なるようにしかならねェし実際なんとかなってンだからいいんだろう。

メニューは決めた。この間行った島で教えてもらった料理と、あとはレディやチョッパーの為のデザートも。必要な材料を腕一杯に抱えてキッチンに向かう。調味料も揃えたしあとは俺が腕を奮うだけ。
鼻唄を響かせながらフライパンにブドウ酒を注ぐ。キッチンの外ではやけにドタドタとした足音が聞こえ、フライパンから炎が上がる音で内容までは聞こえないが恐らくルフィだろう。前にもあったと思い出す。麦わら帽子を無くした時だったか。色々思い出すと、この船のクルーになってからろくな事がない事を思い知る。こうやって毎日料理作って、普通に笑っていられるのが不思議なくらいだ。

ドタドタ、足音が近づいてくる。この軽やかで大胆な足音はきっとナミさんに違いない。案の定振り返ってみるとそこには麗しいナミさんの姿。ただ、表情は険しい。



「…何かあったのか?」



息を切らして俺を見ているナミさん。そんなに見られると照れるぜ、なんて冗談を言えるような雰囲気でもないらしい。フライパンを揺らす手を止め尋ねると、不安でいっぱいなナミさんの声が帰ってきた。



「むー…むーがどこにもいないの!」



―――と。
くわえていたタバコを落としそうになるが慌てて手に持つ。ジュージュー、香ばしい香りが漂うキッチンに流れる空気は酷く重苦しい。



「朝起きたらベッドにいなくて…ベッドも冷たかったから、おかしいと思って探したんだけどどこにも見当たらない…!皆で探してるんだけどやっぱりどこにもいないの…!!」



フライパンを揺らす手が完全に止まり、料理が台無しになる前に取り敢えず火を止める。ナミさんが言っている言葉の意味を理解するにはそう、時間はかからなかった。思い浮かんだ、彼女の居場所はただひとつ。きっとナミさんやロビンちゃん、他の野郎共も薄らとは気付いているんだろう。



「……帰っちまった、か」



呟いた言葉に、ナミさんが唇を噛み締める。



「…もう少し探してみる!」



そう、半ば叫んでいるような声でナミさんは去っていった。きっと。多分。恐らく。気づいているはずなのに。認めたくない気持ちも解るが、現実は現実。





彼女がここに
やってきた時のように
そう、
それは突然に。






一度大きく息を吐く。そこにいたのは意外と冷静な自分だった。
料理が冷めねェうちに、といつも通り並べられていた朝食を見てまた溜め息。無駄にするのは許せねェ……が。きっとルフィが食ってくれるだろう。ウソップやチョッパーかもしれねェし、マリモかもしれない。
今、朝食が出来たと呼んだところで果たして食ってくれるかも分からねェ。だが、受け入れなければいけない現実もある。それどころじゃねェと返されたって、きっともう、彼女はこの船のどこを探しても見付からないのだろう。





さあ、この
一つ余った料理は
一体どうしてしまおうか



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