下駄箱で偶然、だった。
用事を済ませて、さぁ帰ろう!って下駄箱で靴を履き替えたとき、二人が私に気付いて立ち止まった。
一緒に帰ろうとかそんなことは言わなかったけど、待っててくれたみたいで何と無く合流して。
今、3人並んだ影を夕陽が映し出している。



「今日は二人で帰るんだね」

「祐希が漫画買いに行きたいんだって」

「だって新刊出たんだもん」



祐希くんと悠太くんが並んで歩き、私は祐希くんの隣を少し離れて歩く。
そうすることに特に意味はないけど、なんとなく。
悠太くんの横だとなんかやっぱり緊張するような気がするし。
祐希くんと悠太くんは見た目ソックリな双子なのに、祐希くんの隣を歩くことは平気だったりする。

“好き”って偉大だなぁ…なんて。



「今日はパッと買ってさっさと帰るからね」

「えーいつもそうじゃん」

「いつも新刊以外にあれもこれもって、めちゃくちゃ時間かかるじゃん」

「仕方ないじゃんそんなの」

「むむむさんも何か言ってやってよ」

「え、」



突然振られて驚く私と、隣でまだそんな言い合いをする二人。
それがなんだか面白くて。
ふふ、って笑ってしまう。



「…何か笑われたんですけど」

「祐希が何か変なことしたんじゃないの?」

「してないよ、悠太じゃないの」

「え、いや違うくて、何か…二人のそんな言い合いってあんまり聞いたことないから……仲良しだなぁって」



もしかしたら学校でも普通にこんな風に言い合ったりする事もあるのかもしれないけど、私が見るのは初めて。
悠太くんと祐希くんがすごく仲良しなのは知ってる。
だけど傍にはいつも塚原くんや橘くん、それから松岡くんが一緒にいて、こんな会話もだいたい塚原くんと祐希くんだったり、塚原くんと橘くんだったり。(塚原くんばっかりだな)
だからなんか、兄弟のこういう自然な感じとか、見られるのが凄くなんか、何て言うか、心がほっこりと温まるようなそんな気持ちになるっていうか。



「…あ、じゃあ私こっちだから、」

「……じゃあまた」

「なんかすいません付き合わせちゃって。また明日」



バイバイって、手を振って。
なんだかものすごく、幸せな気持ちのまま残りの道をゆっくりと歩いた。


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