今日のおやつは何にしよう、と頭を捻らせる楽しみがある。ある程度毎日違うものを考えて作るのは大変な事だが、ここの船員達は何を作っても美味い旨いと山ほど食ってくれるから作り甲斐があるってもんだ。今日もまた新作のおやつを作り、配って回る。ナミさんやロビンちゃん、野郎共に渡して最後は、むーちゃん。船から海を眺めるようにしている後ろ姿を見つける。…――その後ろ姿に声をかけていいのかどうか。時々、それすら躊躇ってしまうような雰囲気を醸し出している瞬間がある。躊躇いがちに声を掛けると、振り向いた彼女はニッコリ笑って渡したおやつを受け取った。その笑顔を見て、安心する自分がいる。


「……あ。あの鳥、なんか面白い形」

「ああいうのは“あっち”にはいねェのか?」

「いないよ、不思議な生き物ばっかりだよこっちは」

「…そうか」

「うん。サンジ達が私の育った世界に来たら、こっちの世界とは違いすぎてびっくりしちゃうと思うよ」


ふふ、と笑った彼女の横顔を、ぼんやり、と眺める。あっちの世界と、こっちの世界。幾らこっちの世界に馴染んでいようが彼女はこっちの世界の人間ではないんだと、ふとした瞬間に思い知らされる。勿論、むーちゃんを軽蔑してる訳でもなければ、寧ろ大歓迎だ。知りたい、だけど…――知れば知るほど離れていく。不思議な感情を抱きながら、ポケットから煙草を一本取り出した。

ごちそうさま







麦わら海賊団の一員になって、どれくらいの月日が流れただろうか。一員、と言っていいものかどうか正直よくわからないけれど、彼…――ルフィ。彼ならば私を“仲間”だと言うのかもしれない。コックさんに貰ったおやつを食べながら紅茶を頂く。最近の私たちは、海賊にしてはのんびりとした日常を送っている。忙しなく生きてきた私にとっては、少しばかりゆっくりし過ぎているのかもしれない。だけど居心地は悪くない……ここの海賊団はとても不思議。不思議と言える人物が沢山いる。ルフィも剣士さんも航海士さんもコックさんも皆…――むーという少女もしかり。おかわりの紅茶を持ってきてくれたその“少女”が、人懐っこい笑顔で私の名を呼んだ。一緒にどうかと尋ねたら、彼女はまた笑って頷いた。


「ロビンと二人で話すのは初めてだね」

「言われてみればそうかもしれないわね。ずっと話してみたかった…私はあなたにとても興味があるの」

「…そう、言われると緊張しちゃうな。最初は、ロビンが全部知ってるんだと思ってたけど」

「いいえ、私は何も知らないわ。だけどとても興味がある。あなたは…――とても不思議だから」


伸ばした手が触れた彼女の髪は、サラサラと零れていく。彼女は弱く儚い、この世界には“異質”な存在。私は彼女にとても興味がある。だけど私は全てを知らなくていいと思っているし、全てを知る必要はないとも思っている。照れたように笑った彼女を見ながら、私は持ってきてくれた紅茶に口をつけた。

おはなししましょう







飯を食っておやつも食って。腹一杯とは言わないけどサンジが作る料理は美味くないもんがない。腹一杯食ったら眠くなってきた。太陽の光を浴びながら、海の風を感じながら、うとうと、うとうと。隣で寝るチョッパーみたいにおれも瞼が落ちていく。ああ今日もいい天気だ、空が、海が青い。


「…ルフィ、寝てる?」

「んん?ああ、おれ寝てねェよ飯食ってる」

「ご飯の時間じゃないよ…ルフィ、ナミが呼んでたよ。早く行かないと怒られちゃうんじゃないの」

「ああそうだな、今日の夕飯は肉がいい…」

「もう、ルフィってば…」


飯を食いながら、うっすら見えたむーが太陽でキラキラしてた。今度の島では一緒に飯食いにいくんだ約束したから。それにしても腹に溜まらねぇ肉だなァなんて思いながら、おれは瞼を落とした。

おやすみなさい


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