寒い寒い冬の日のお昼休み。
賑やかな教室の中、隅の席でポツンと窓の外を眺めるのは私。
外は朝から降り続けている雪で真っ白。
静かにはしているけど、密かにワクワクしているなんて何となく恥ずかしくて言えない。



「むむむさーんヤッホー!」



元気な声に振り返れば片手を上げた橘くんと、後ろに手を組んだ松岡くんが私の場所まで駆け寄ってくる。
珍しいなぁなんて思って口元を緩めると、橘くんはそのまま私の前の席に座った。
隣に立った松岡くんは、机に手をついて「真っ白ですねぇ」と呟いた。



「窓際寒っ!」

「確かに少し冷えますね…」

「むむむさん平気な顔してるけど寒くない?」

「ちょっと冷えるけど、暖房ついてるし大丈夫かな」



自分を抱き締めながら寒い寒いと震える橘くんに、松岡くんは心配そうな表情を向ける。
確かに窓際は少し冷えるけど、大袈裟な橘くんに少し笑ってしまった。



「それにしても凄い雪ですね」

「なーもう真っ白。次のテストに向けた俺の頭の中も真っ白」



表情豊かな橘くんは、次は机に顔を乗せてうなだれ始める。
そういえば私も明日小テストだ、なんて思いながら何と無く松岡くんに視線を向けると「すみません」って言いながら困ったような微笑みを見せてくれた。

それから勉強の話だったり、塚原くんや祐希くん悠太くんの話を始める。
表情やテンションがコロコロ変わる橘くんと、それに相槌を打ちながら見守る松岡くんは何だか保護者みたいだ。



「…どうかしましたか?」

「や、…二人が来るなんて珍しいなぁと思って



私の顔を覗き込んでそう聞いてきた松岡くんに、私は首を横に振って何と無く思ったことを口にしてみる。
キョトンとした二人に、私もキョトン。
…あれ、なんか、変なこと言ったっけ。



「いや。最近むむむさんと話してなかったなーと思って。ねー春ちゃん」

「はい、僕たちクラスも違うからあんまり話せないので」

「…え、それだけ?」

「それだけ?ってむむむさんヒドイ!えー別に俺らとなんか話せなくて良かったって?あーやだやだ」

「え、いやそんなんじゃなくて……嬉しいなぁ、と、思って」



だって、ねぇ?
私なんかと話したいなんて、思ってくれる人なんてなかなかいないよ。
私の言葉に二人は顔を見合わせて、そしてニッコリと笑った。



「じゃあさ、放課後みんなで雪だるま作るからむむむさんも校庭集合な!」

「祐希くんたちも誘おうと思ってるんです」



ふふ、と笑った松岡くんの笑顔はとっても可愛い。
楽しみにしてるねってそう言うと二人は満点の笑顔で教室を走り去っていく。
雪だるまかぁ。
まだ降り続く雪を目で追いかけながら、放課後が待ち遠しい気持ちが私の胸をじんわりと温めた。


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