お昼休み。いつもの噴水の前で待ち伏せをすれば、やって来るのは待ちわびた彼。



「よ!」



ニカッと笑みを浮かべた彼は、何の躊躇いもなく私の隣にドカッと腰掛ける。そして両手に持たれたお揃いのお弁当袋をひとつ、私の膝の上に乗せる。私が最近お付き合いを始めた彼――奥村燐は、とっても料理上手で私もそれが大好き。そんな話をしたら弁当作ってきてやるよ!なんて言うから私はそれに甘えて、毎日お弁当を作ってきてもらっている。
袋から出して蓋を開ける、この瞬間のワクワク感。いつも見た目も色とりどりで、思わずパァッと笑顔になっちゃうくらいのお弁当を私に提供してくれる。



「どうだ?」

「まだ食べてないよ」

「そっか。あ、俺のオススメはこれ!雪男もこれ好きなんだぜ」



ニコニコした彼も嬉しそうに私の持っているお弁当をひとつひとつ指差して色んな説明をしてくれる。創作料理なんかもたくさんあるけど、どれを食べてもハズレがない。全部美味しいんだもん。
彼も膝に乗せたお弁当を広げる。中身は勿論同じだけどやっぱり少しだけ彼のお弁当箱の方が大きい。



「明日テストだなー」

「ん……珍しいね、そういうこと言うの」

「仕方ねぇだろ、帰ったら毎日テスト勉強だぜ?雪男が付きっきりだしよ…」



もう降参ですとでも言いたげに、完全に項垂れながら箸を進める。頑張れとしか声をかけられないけど、私も頑張らなきゃいけないから小さく溜め息。成績が悪いのは彼だけじゃなくて私も同じ。…まぁ、彼程、悪いわけでもないけど。
そんなことを思いながら私も同じようにお弁当をつつく。



「また料理上手くなったね」

「お!本当にそう思うか?」

「ん、美味しい」



今度は満面の笑みで私に寄り掛かってくる。うははって笑い声に私も笑えてきた。何が楽しいのか私にも分かんないけど、きっと幸せだから笑えてるんだろうなってそんなことを思った。


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