「はい、今日の授業はこれで終わり」



古典の授業が終わる。
宿題を出されチャイムが鳴り、先生は微笑みながら教室を去っていく。
かっこいいよねぇ、なんてクラスの女の子の声が聞こえてくる。
確かに東先生は優しいしカッコいいし男女問わず人気者で、いつでも周りに生徒がいるようなそんな存在。

次の授業は音楽室で、古典の教科書を机にしまって音楽の教科書を引っ張り出した。
今日は歌のテスト。
嫌だなぁ、なんて憂鬱な気持ちになりながら廊下を歩く。



「あ、むむむさんちょっといいかな」



後ろから聞きなれた声に呼ばれ、振り向くと東先生が私を呼んでいた。
立ち止まる私のところまで来ると、先生は柔らかい笑顔を浮かべながら要件を私に告げる。



「むむむさん、プリントの提出がまだなんだけど大丈夫?」

「……あ、っ…すいません今持ってきます、」

「あ、いやいいよ!次の授業もあるし、昼休みにでも持ってきてくれれば大丈夫だから。ついでに浅羽祐希くんにも言っておいてくれると助かるんだけど」



苦笑いを浮かべた先生に「わかりました」と返事をして軽く頭を下げると、先生は軽く手を上げて廊下を歩いていった。

歌のテストは無事に終わった。
午前の授業もこれで終わり。
岬ちゃんとご飯を食べて、プリントのことを言うと「行ってらっしゃい」なんて言葉が返ってきた。
一緒に来てくれたらいいな、なんて思ったけど自業自得だから仕方ない。
教室を出るとそこにちょうど祐希くんを見付けて声をかけると、ゆっくりと振り向いた。



「古典のプリント出してないって東先生が言ってたんだけど…」

「……あ。忘れてました」

「私今から出しに行くんだけど、良かったら一緒に持ってくよ」

「いいんですかすいません…っていうか俺も行きます」



暇なんで、と付け加えた祐希くんがプリントを持ちにいって、二人で先生に提出しに行く。
あんまり話すことはないけど、祐希くんは気にする様子もなく欠伸をしたりいつも通りだった。



「せんせープリント持ってきました」

「ああ、ありがとう」



ニッコリ笑った先生に私もプリントを差し出した。



「あ!むーちゃん!」

「…俺もいるんですけど」

「久しぶり!」



ひょいっと向こう側から現れたのは先生のお友達のあきらさんだった。
キラキラした笑顔で私たちに手を振り、目の前まで歩いてくると私の身長に合わせて身を屈める。
元気だった?とか髪伸びたねなんて笑いながら私の髪を撫でる。
そんな様子を見た東先生は穏やかに笑った。



「相変わらずだなあきらは」

「えー?どういうことー?」

「むむむさんによくなついてる」

「ちょっとこーちゃん!なついてくれてるのはむーちゃんだよ、ねー?」



祐希くんと反対側にピッタリくっついたあきらさんが、可愛くそう言った。
可愛く、っていうのは少し失礼かもしれないし少し違うのかもしれない。
あきらさんも東先生ほどじゃないけど身長も高くてスラッとしてて、爽やかっていうか何て言うか、東先生と同い年には見えないくらい童顔だけど、うん、かっこいい、と、思う。



「じゃあ二人とも、次からは提出気を付けるようにね」

「はーい」

「気を付けます」



ペコリ、と頭を下げる私と祐希くんの姿に先生とあきらさんが小さく笑うのが分かった。









( 東先生が 好き なんて )


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