頼られるって、嬉しいけどそれだけじゃない。
忙しいから手伝えとかそれならやっても構わないが、自分が楽しみたいがために人を頼る奴を見るとイラッとする。
正直しんどい。

うちの学校ももうすぐ文化祭で、学級委員長である自分たちに回ってくる仕事は普段より格段に多い。
俺だって忙しいんだよ。
なのに俺ならやってくれるとか頼りになるからとか、そんな理由で仕事を押し付けられる。
断らない自分も悪いのかも知れないが、そもそも皆が自分でやりゃそれで済む話だ。
知らず知らず溜め息が漏れる。



「塚原先輩、生徒会会議終わったのに帰らないんですか」

「あ?帰れねんだよ。文化祭費用、うちのクラスはどうやって割り振ってくか決めて担任に報告しねぇと」



やることは山積み。
自分の仕事もまだ終わってねぇのに先輩には仕事押し付けられるし、正直気分は最悪だ。
終わるわけねーだろ、こんなの、何時間かかんだよ。
口に出せない言葉を呑み込んで、手元に残ったのは仕事だけだった。
わいわい楽しそうに帰ってく先輩や後輩や同級生を眺めて、俺も帰りてぇよ、とまた溜め息。
何気なく見上げた場所に隣のクラスの女子が立っていて勝手に気まずくなった。



「…手伝おっか?」

「あー……うん、」



悪い、と口にして結局仕事を任せることにした。
一人じゃ終わんねぇの分かってたし、せっかく言ってくれてんだから甘えとこうと思って。
他に誰一人手伝ってくれようとする奴なんかいないのに、と思うと他の奴らにちょっとだけ腹がたった。



「あのヒマ人共にわけてやりてぇ」

「悠太くんたち?」

「そ。今ごろ何してんだか」



ほんとに。
どうせ先帰ったんだろうけど、いや分かってんだけど。
隣に座ったむむむについつい愚痴がこぼれる。
他に聞いてくれる奴がいねぇのもそうだが、なんとなく話しやすい気がして。
あんまり話したことなかったけど、一度話せば普通に話せる事が分かってどんどん愚痴が漏れる。
うんそうなんだ大変だねって相槌を打ち、一瞬間が空いた時「頼られてるんだね」と言ったむむむを見て思わず固まる。
いいように使われてるだけ、とそれが彼女にとっては頼られてるのだと言う。
俺の感覚だと頼られてると言うよりもやっぱり押し付けられてるっていう方が強い気がする。

……だから何だか照れる、というか、恥ずかしい、というか。
隣で微笑むむむむから視線を逸らして任された仕事の続きに取り掛かった。



「悪い、送ってく」

「あ…ありがとう」



外はもう暗い。
送ってくとは言ったが特に会話らしい会話は無く、時々思い出したように口を開いて話すくらい。
こうやって話したのは多分今日が初めてだ。
気まずいわけでもなく、ただ少し流れる空気が他よりも穏やかだと思うだけ。
普段騒がしいのが周りにいるから余計なのかもしれない。



「塚原くん、頑張ってね」

「手伝ってくれる気無し、か」

「や、言ってくれればいつでも、私でよかったら全然手伝うよ。クラス違うけど」

「言ったな、聞いたぞ俺は」

「廊下とかちょろちょろしてるとこでも捕まえてくれれば」



優しい子だと思う。
半分冗談で言ってみた内容に返ってきた言葉に、胸が温かくなるような気がする。
せっかく言ってくれたのもそうだし、そう、せっかくだから。
明日から本当に遠慮ないくらい声掛けて手伝わせてやろう、なんてそんな事を思いながら左右に分かれた帰り道を一人で歩いた。



友達のはじまり


( 頼られてる、か )


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