期末テストも終わり、7月ももうあと数日で終わりという時期。
補習はしなくていいように気を付けてるから、登校日以外は学校に行かなくてもいい。
そんな一年間で一番長い連休、夏休みの始まりまであと2日。



「あっつー」



スカートをギリギリまで間繰り上げて、暑い暑いと言いながら下敷きで扇ぐ。
夏休み直前ともなれば、暑さもピークなんじゃない?ってくらいしんどくなってくる。
まだまだこれから暑くなるなんて考えたくもないけど、そんな学校で勉強するよりはずっとマシなのかも、とも思う。



「ねぇ、夏休みさ、宿題一緒にやろうよ」

「そうだねぇ」

「むーの家行っていい?」

「うん、いいよ」



いつにする?とかそんな話をしながら休憩時間の10分はすぐにおわる。
授業が始まると、返ってきた数学のテストの間違った回答を直す時間が与えられる。
先生が黒板に書くんじゃなくて、自力でやり直してなんて言われるから毎回本当に大変。
だけど移動は自由で、友達に聞きながらっていうそんな光景があっちこっちにある。
岬ちゃんも私の前の椅子に座って写させて、とプリントを写していく。
でも岬ちゃんも頭いいから写すのはほんのちょっとだけで、私も後で岬ちゃんのプリントを写させてもらう。
二人とも間違ったところは後で一緒に考える。



「そういえばさ、8月のいつだっけ…夏祭りもあるよね」

「あぁ、うん毎年やってる」

「あれも行こうよ、せっかくだから浴衣着てさ」



楽しそうに話す岬ちゃんに私も大きく頷く。
浴衣じゃなかったけど去年も二人でお祭りに行って、色々話したのを覚えてる。
入学してから一番最初に、ごく自然に仲良くなったのが岬ちゃんだ。
親友、って言えるのかな。
何だか少し照れ臭いけど、そうだったらいいなって思う。

分からない問題を二人で解いていく。



「むむむさん少しいいですか?」

「あ、はい…何でしょう」

「数学のプリント見せてもらってもいいですか?このクラスで一番点数良かったのむむむさんだって言ってたので…」

「……え、そうなの?」

「はい、さっき先生が。悠太くんとやってたんですけどどうも解けなくて…」



松岡くんがやってきて、申し訳なさそうにそう言った。
いいんだけどまだ終わってないんだよねぇ…って岬ちゃんが言えば、後でお願いしますってふわっと笑った。(ほんとに、ふわふわ)
ごめんねって言って松岡くんから視線を逸らしてまた問題を解き始める。
っていうか自分がそんなに点数が良かったとは思ってなくて岬ちゃんと二人でびっくりしたねって笑う。
そこまで高い点数ではないけど、難しくしたって言ってたからそうなったのかもしれない。



「さっ、行っといで」



岬ちゃんに背中を押され、全部解けたプリントを持って松岡くんと浅羽くんの席を見る。
二人で頑張ってるみたいでその様子を眺めてると、不意に浅羽くんと目があった。
見すぎてたかなってどきどきしたまま、彼らの場所にプリントを届けに行く。



「もういいの?」

「あ、うんどうぞ…」

「ありがとうございますっ!」

「ありがとう」



ドキドキ、心臓が速まるのを感じる。
自分の席に戻る途中に後ろから「すごい」とか「丸ばっかり」とか、そんな言葉が聞こえてきて嬉しいけど、少し恥ずかしくなる。

席に戻って岬ちゃんの問題を一緒に解いて、ちょうど埋まった時にチャイムが鳴った。



「プリント、一緒に出しておいたんだけどよかった?」

「あ、うん、ありがとう」



何でもない事かもしれない。
だけど他の子みたいに自分から話しかける勇気もなくて、キッカケも掴めない私にとっては貴重で、大切な瞬間。
今日はいい日だったなぁって、そんな喜びを噛み締めながら次の授業の準備をした。



もうすぐ夏休み


(今日はいい日だ)


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