朝、通学中に後ろから誰かに名前を呼ばれて振り向くとそこには塚原くんが居た。
今日は一人なんだなぁって思いながら立ち止まって塚原くんが傍に来るのを待った。



「おはよう」

「…はよ」



なんだかちょっと挙動不審で、一緒に歩くけど別に何かを話すわけでもない。
何となく話し掛けてくれたのかもしれないけど。(それはそれで嬉しい)



「むむむさーん!」

「おはようございますっ」

「要っちもいるじゃん!」



今度は橘くんと松岡くん。
なんか今日はどうしたんだろ…って戸惑ってると、前に回り込んだ橘くんが私にさしだすそれ。
キョトンとする私に、一度咳払いをしてニカッと笑った。



「3月14日といえばホワイトデーです!」

「…あ。え、いいよいいよ!あんなの全然だし、そんなつもりじゃなかったし…」

「何言ってんの!貰ったからには返すのがジョーシキ?みたいな?」



ぐいぐい押しつけられるソレに、結局それを受け取る事に。



「ボクも、よかったらもらってください」



ふわふわした笑顔で差し出してくれたピンクのラッピング。
ごめんねありがとう、って声をかけて受け取ると、松岡くんはにっこり笑ってくれた。
たいしたものあげてないし皆お返し大変だろうし、本当に申し訳ない。
そのまま学校に着くと、下駄箱で会った岬ちゃんに笑われる。
すごいメンバーだね、って私もそう思う。

いつもと変わらない時間を過ごして昼休み。
お菓子を食べながら岬ちゃんと話してると横から悠太くんが私を呼ぶ声。
ドキッとしてゆっくり振り向くと、悠太くんが私にまさかのホワイトデー。



「え…えっ?…あの、」

「たいしたものじゃないですけど」

「…ごめんね、ありがとう」



すぐ戻っていったけど、緊張しすぎて心臓が、やばい。
よかったじゃん!って私の肩をバシバシ叩いて喜んでくれる岬ちゃんを見て、私って幸せだなぁなんてそんな事思った。
放課後までちょっと浮かれた気持ちで過ごす。
放課後、荷物を片付けて本を借りにいこうと図書館に寄る。
特に借りたいものはなかったけど、面白いのないかなって新刊の並ぶ本棚を眺める。



「むむむ」



今日は良く呼ばれるなって振り向けば、朝同様に塚原くん。
どしたの?って声をかければまた朝と同じようにちょっと私から視線を逸らす。
それから周りをキョロキョロして何かを確認した後、カバンから何かを取り出した。



「一応、お返し」

「……ありがと」

「笑うなっつーの」



何か意外で。
朝から挙動不審だったのはこれなのかなって思うとちょっと笑えて、塚原くんに怒られた。
それから生徒会があるらしく塚原くんは図書館を出ていく。
結局司書のお兄さんにお薦めの本を聞いて借りることにして、帰ろうかなって下駄箱に向かう。



「……」



下駄箱を開けると、そこにはまた可愛い包みの袋。
取り出してみると名前とか書いてなくて、誰からなのかわからない。
そもそも私宛てなのかもわからなくて、持ってかえって良いものなのかすら謎。



「どうしたの?」



横から声を掛けてくれた東先生にその話をすると、笑いながら「多分大丈夫だよ」って言ってくれる。
根拠があるのかはわからないけど、じゃあいっか…って鞄にしまう。



「雨降ってるけど気を付けてね」

「あ……はい、」



先生とさよならして外に出ると、ポツポツと雨が降っている。
もう3月なのにまだ寒いなぁって思いながら首に巻いたマフラーで口元まで覆い、ゆっくり家路を歩いた。









―――――
下駄箱に入れたのは祐希。


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