文化祭が終わった。
2日間はそれなりに楽しかったと思う。
喫茶店も大盛況だったし、先生もクラスの子たちもみんな嬉しそうにしている。
真っ暗な中、運動場の真ん中に置かれたキャンプファイアの火が赤く揺れて周辺を照らしている。
外は賑やかな後夜祭が行われている。
俺らは疲れ果てて、教室に残ってダラダラしているだけだけど。
千鶴が女子トイレの話をしたり、まぁ話題はそれなりにあったりなかったりで時間を過ごす。
疲れた、帰りたい、もうそればっかりの繰り返し。
あんなにカメラに囲まれるとは。
もう本当に疲れました。



「あ、春ちゃん誰に手ぇ振ってんの?」

「むむむさんと坂元さんですよ」



机に肘をのせて、手のひらに顎をのせて。
千鶴が春のところに行って二人を探している。
祐希も興味を持ったのか立ち上がり千鶴の隣に移動して、振り返って俺を呼んだ。
ゆっくり立ち上がって祐希の隣に立つと、千鶴が二人を見付けたのか「あ、いた!」と無駄に大きな声をあげた。



「こっち向いてくれるかなーおーい!」

「ちょっと千鶴声大きいよ」

「恥ずかしいですから」



千鶴は声をあげて大きく左腕を振っている。
先に気付いた坂元さんが隣にいたむむむさんに伝えるような素振りを見せると、二人揃って俺らを見上げた。
俺も祐希も小さく手を振る。
遠慮がちに振り返されたそれはむむむさんらしくていいと思う。



「ちょっと要っちー!」

「あ?んだよ」

「ノリ悪いよノリ!」

「なんだよノリって、ノリ関係ねーだろ」



千鶴に無理矢理引っ張られた要も俺らと並ぶようにして窓枠に肘を置いた。
下に視線を戻すと二人はまだそこにいて、時々笑いながら楽しそうに話をしていた。



「つーか早く帰りてぇ」

「また要っちはそうやって楽しい空気をぶち壊す!」

「楽しくねぇだろ別に、だったらお前も参加してこいよ下行けよ」

「ちょ、無理死ぬ!死ぬ!」



要が千鶴の腕を掴んで窓から落とそうとしている。
くだらないなぁと思う。
でも嫌いじゃない。
文化祭で騒ぐだけ騒いだし囲まれたんだから今はこれでいい。
ああ本当に疲れた。
まだ終わらないのかな、なんて頭の隅で考えながら盛り上がる運動場を最後まで眺め続けた。



揺れる、ゆれる


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