高校生になってから、私にも気になる男の子っていうのができた。
相手は双子で、お兄ちゃん。
入学した時から双子だっていうことで注目されてたし、容姿もずば抜けて綺麗な二人が人気者になるのはすぐだった。
私も、最初は一目惚れだったのかもしれない。
クラスも違うし関わりなんてないから、いつも見てるだけ。
だけど別にそれでよかった。
それでいいって思ってる。


(けど、なぁ……)


鞄に入ったままの包みを渡せないまま、取り出せないままもうお昼休み。
鞄を覗いてはため息が出る。
なんと言っても今日はバレンタインデーで、これは二日前に迷いに迷って買ってきたチョコレート。
渡せたらいいな、って買ってきたこれは、渡すどころか今日はまともに浅羽くんさえ見ていない気がする。
見かけたにしてもいつも女の子に囲まれてて、ああやっぱり人気者なんだなぁって、ちょっと落ち込む。

どうしよう渡せるかな、渡したいな、でも…なんて繰り広げられる葛藤。
きっと浅羽くんは私の存在なんて知らないから、渡されたところで困っちゃうかもしれない。
だったらロッカーとかに入れとけばよかったのかもしれないけど、朝来た時には下駄箱もロッカーも机の中も先に入れた子がいたのだ。
見えたラッピングが私のよりもずっと豪華で、何だか怯んで私のは入れられなかった。

悶々と考える。
浅羽くんは時々塚原くんに辞書なんかを借りにくるけど、その時くらいしかこの教室には現れない。
だからってその時渡すのも無理に決まってる。
ああもうやだどうしよう、なんて考えてたらもう放課後。
みんながそそくさと帰っていく中、私も鞄に教科書や筆箱を詰め込む。
…そういえば職員室呼ばれてたんだっけ、と思い出して先に職員室に行くと話の長い先生に捕まり延々話を聞かされた。

結局わたせなかった、渡したところで浅羽くんは私のこと分からないかもしれないし、って考えると良かったようなだけど悲しい気持ちになる。
私なんかにもらっても、きっと、嬉しくないんだろうなぁ、なんて落ち込みながら教室に帰るともう誰もいない。



「ねえ、要知らない?」



バッと顔を上げたそこには浅羽くんがいて、落ち込みは一瞬で焦りに変わる。
いないと思うんだけどごめん知らない、と言葉を紡ぎながら速まる心臓の動きを感じる。


(浅羽くん、)


そっかじゃあと出ていく彼を、咄嗟に呼び止めようとした自分がいたけど結局声は出なかった。

やっぱり、無理だ。
もしかしたら、もし差し出してたら受け取ってくれてたのかな、なんて思いながら教室を出ていく浅羽くんの背中をただぼんやりと見送った。



数分経ってまた弱音

(ああもう私の意気地無し…)










―――――
一年生のバレンタイン。


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