入学して三年間、風邪以外で休んだ事はないし遅刻も早退も必要な時以外はした事がない。
…否、なかった。
それはこの瞬間過去形になるかもしれないからだ。
急いでる。
学校もすぐそこ。
だけどチャイムも鳴る直前。



「…ギリギリだったな」



校門に足を踏み入れた瞬間鳴り響いたチャイムの音。
草壁さんの一言に救われて、良かったっていう安心感から笑顔が浮かんでしまった。
おはようございますって声をかけると草壁さんも同じようにおはようって返してくれた。
年齢不詳なんだけど多分同級生だと思うんだけど…うん、なんかよくわからないのが正解。

とりあえず遅刻にならなくてよかった。それが一番。
私より後に入ってきた生徒は完全に遅刻集団で、草壁さんはきっちり手元のファイルに彼らの名前を書き連ねていく。
そのファイルはこれから風紀委員長の元に渡り、何かしらの罰が言い渡されるんだと思う。
遅刻したことないからわからないけど、噂では回数が増える毎に罰も体罰や暴力に近付いていくとかなんとか。

そんな事を考えながら玄関に向けて歩いてると、目の前から颯爽と歩いてくる人が目に入る。
すぐに視線を逸らした。
挨拶しようか迷ったけど、迷っている間に彼は私の横をスッと通り過ぎていく。
ドキドキした。
恋愛感情とは違う、恐怖と緊張のドキドキ。
黒髪に鋭い視線、制服であるはずのブレザーでなく真っ黒な学ランを身に付ける彼は目が合うだけで殺されるんじゃないかっていう気分さえ起こしてしまう。

たった一瞬目に入るだけで、ほんの一瞬すれ違うだけで恐怖に支配されていく威圧感。
彼こそが我が並盛中、いやもう並盛地区最強で最狂で最恐と言われている雲雀恭弥なのだ。
肩書きはただの風紀委員長なんだけど、そんな狭い所におさまってる人なんかじゃない。

彼が卒業するまで、校則違反なんて出来たもんじゃない。(きっと彼も三年生だから私たちにはそんなの関係ないけど)

この間見た、モザイクをかけてしまい込んだはずの映像が浮かぶ。
あの血痕を作り出した人物。

プルプルと首を振り、やっぱり記憶には更なるモザイクと、蓋と鍵を追加して心の奥にしまい込もうと決めた。



並盛中学校風紀委員長雲雀恭弥


(学ランが校則違反だなんてきっと誰も言えないだろう)


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