並中に通い始めて早3年。
成績普通、容姿普通、部活は帰宅部で友達もそこそこ、ちなみに彼氏も恋の相手もいない。
特に目立った行動をしてきたわけでもなく、無難に平凡に過ごしている。

授業が終わって放課後。
部活もしてない私はカバンを持って、帰るにはまだ早いから行き慣れた図書室に入り浸る。
司書のお兄さんオススメの小説を開いて、適当に時間をつぶす。

と、突然思い出したこと。
今日は数学の宿題が出てたんだ。
カバンを探るけどそこにはプリントどころか筆箱すらない。
あるのは食べ掛けのチョコレートと携帯電話と、ファイルに入ってるけど角がクシャクシャのプリントと幾つかのゴミ。(ああ片付けなくちゃ…)

司書のお兄さんにまた戻ってくる事を告げて教室までプリントと筆箱を持ちに行く。
教室にはもう誰もいなくて、静まり返った空気はなんだか不思議な気分になる。
窓際の自分の席、机の上にはやっぱり筆箱が置いてあって、机の中から宿題のプリントを探り出す。
やっぱり角はぐしゃぐしゃだ。

窓から見える校庭から聞こえてくる元気な声は野球部のものらしい。
カキーンと響き渡る金属音は聞いてるだけで、清々しい気持ちになる気がする。

筆箱を握り締めて図書室に戻った。
図書室には、色んな人の声が幾つも賑やかに響く。
私の隣の机にはカップルもいる。付き合い初めてもう1年になるんだったっけ。(あの時はクラス中の噂になったんだ)

愛だの恋だのって、私にはそんな前兆さえ見えやしない。
それどころか、汗を流す事もないし何かに一生懸命になったことすら無いのかもしれない。



「宿題?」

「あ、うん。帰ってやるの面倒臭いなぁと思って」

「じゃあ僕もやろうかな」



話し掛けててくれて私の隣の席に座ったのは、クラスメイトでこれまた私の隣の席の彼。
彼も別に目立つわけじゃないけど、爽やかな笑顔と大らかな人柄に惹かれている女子はきっと少なくはない。
と、思う。

カリカリ、シャーペンの音。
ここわかる?とかそんなやりとりを時々して、プリントは見慣れた私の字で埋まっていく。

もし私と彼が付き合いはじめたら……なんて一瞬浮かんだ思考は、彼に申し訳なくなって即座に抹消。
こんな私に青春や幸せなんてやってくるのだろうかと漠然とした不安に襲われながら、筆箱とプリントをカバンに突っ込んで家に帰ることにした。

帰りぎわに偶然見付けた血痕らしきものに1人の男の顔が浮かんだが、こちらも首を横に振り何も見ていないと記憶にモザイクをかけた。



青春とはかけ離れた日常の出来事


(青春って何だろう)


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