ここは京都で、私は新選組に保護してもらっている。
ただ保護してもらってるだけじゃ申し訳ないからと色んな雑用をこなしたりもしているわけだけど、1日の大抵の時間はやることがなくて部屋に引きこもり。
時々、一くんや山崎さんと庭を眺めながら話したりする事もあるけどそんなに頻繁でもなくて。
出歩くには私はこの街を知らなさすぎるし、だからと言って誰かを連れていくのも何だか忍びない。


「何してやがんだ」

「あ…おはようございます。お仕事は終わりましたか?」

「ああ一通りはな」


そういえば土方さんの質問に答えてないけど、当人は気にしていないようだったからまぁいいやって。
それに多分気付いてるし。
ただの日向ぼっこだし。


「いつもこうしているようだが、一体何を見てんだ?」

「庭を眺めてるだけですよ」

「他にやることねぇのか……ねぇんだよなお前は」


土方さんは自分の言葉を考えながら溜め息を吐いた。
腕組みをして私を見る彼を見上げていると首が痛くなるけど、綺麗な人だと思わず見惚れる。
昔の人は身長が低いっていうのをどこかで聞いたことがあったような気がしたけど、それはどうやら当て嵌まらないらしい。
他の隊士さんたちをたまに見かけると余り高くはないようだけど。

土方さんはゆっくりと私の隣に腰掛けた。
予想外の行動に驚いて目を見開いていると、怪訝そうに顔を歪めた。
隣に土方さんが座ってるとそれだけで何だか緊張してしまう。


「…んだよその顔は」

「や…いいと思います、よ?」

「にやけてんだよ」


大きな手が私の緩んだ口元を掴むと、馬鹿野郎と付け足して彼もまた軽く笑った。
うわあなんか貴重だ、と思った。

何も無く流れる時間。
いつも忙しそうにしている土方さんとは話す事とか、下手すりゃ顔を合わせる事もあんまり無くて。
結局、やっぱり緊張する。


「お団子でも食べたいですね」

「……そうだな」


小馬鹿にされるかと思ってたけど、意外とそうでもなくて。
それがなんかちょっと嬉しくて。


「今度はお団子とお茶、用意しますね」

「俺はお前が思ってる程暇じゃねぇんだ。今度があると思ってんのか」

「あればいいなって思ってます」


へらっと笑ってみせると、土方さんは半ば呆れたように溜め息を吐いて小さく笑った。
今日は機嫌がいいのかもしれない。


「俺は上物の団子しか食わねえぞ」

「頑張って買ってきます」


ゆっくり立ち上がった彼の手はがっしりと私の頭に乗り、そのせいで結構な体重を掛けられて前のめり。
時間をかけてっかく結った髪の毛もぐしゃぐしゃ。


「楽しみにしてるとは言わねぇが、たまには相手をしてやってもいい」


だけど上から振ってきた声が余りにも優しくて柔らかくて、思わず顔に熱が集まる。
それを隠すように袖で口元を隠す。
だけどきっと全て気付いているであろう彼はもう一度くしゃっと髪を撫で、風邪引くんじゃねぇぞと言い残して去っていった。
もう何が恥ずかしいとか分からないけど、なんか土方さんが優しい気がしてドキドキしている自分がいた。


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