この前借りた本は、タイトルからは想像も出来ないような純愛の物語だった。私が読みたいのはどちらかと言えば恋愛小説よりも、部活を頑張っているような青春系の小説だったんだけど…と思いながらも律儀に全部読んだ私。やっぱり恋愛してると辛いことも多いんだなぁ、なんて他人事のように思った。残念ながら共感できる部分がなかったのは、私とその小説の主人公の性格の違いだろうか。私は別に積極的でもないしそんなに情熱的にもなれないからね。
「ねぇ、私たちには言ってくれないの?」
「…え、何が?」
「浅羽とのこと」
「浅羽くん…え、何を?」
「何を、じゃねぇよ一緒に帰ったりしてんだろうが!!」
キレ始めた友人を抑えて考える。そういえば私この二人には「何かあった?」って聞かれてもいつも「何もないよ」で済ませているような気がする。隠してるつもりはないのに、結果、隠してることに違いはないってことになる。そっか、一緒に帰ったこととか、何も言ってないんだ私。二人を見る限り、二人はそれを知っている。私が言うのを待っているのかもしれない。
「一緒に帰るときってどんな話するの?」
「…なんだろ、別にそんなに」
「学校でも話したりしてるの?」
「前は図書館で」
「え、浅羽って図書館とか行くんだ」
「そうみたいだね」
実際、聞かれて答えても、本当に大したことしてないんだなってそう思った。帰るとか、誘ってくれるとか、そんなのは本当に特別なことなのかもしれないけど、会話らしい会話もないし、一緒に帰ってる意味あるのかなってくらい本当に何もない。並んで歩けるだけで幸せなことなんだけど。贅沢は言わないんだ、結局友達なんてそんなもん。
「もう告白すればいいと思うんだよね、私」
「…だからさ」
「私もそう思う」
「いや、だからさ…」
「あんたはなに思ってるか知らないけど、私たちみたいに“浅羽は何にも興味ない”ってイメージ持ってる方からしたらさ、それだけ興味持ってもらってたらもう十分じゃん」
「そうだよ、浅羽から帰ろうって誘われたりしてるんでしょ?これ以上“友達として”どう進展したいの。友達だからって浅羽が女子誘うとかありえないから」
なんか、ね…なんか。橘くんの言葉を思い出した。最初は面白がってたけど今は本当に応援してんだよ!的なあれ。本当に二人もそうなんだなって、そうなのかなって、分かったっていうか。前にもこうやって厳しいこと言ってくれたことあるけど、その時は全然気付かなかったんだ。ただ楽しんでるって、そうとしか思ってなかった。悲観的になりすぎてたのかもしれない。ちょっとくらい、ちょっと、ほんとにちょっとだけなら、自意識過剰になっても、いいのかな、なんて。
「だからさ、また入れておいたから」
「…何を?」
「手紙」
「……は?」
「浅羽の下駄箱に入れておいたから。今度はちゃんと名前書いておいたし」
頭が真っ白になった。何やってんのほんとに馬鹿なんじゃないの?って思わず口に出たくらい。行くしかないよ、今しかないって、と、笑った二人。正直かなり腹が立ったしむかつく、何を勝手なことしてるの、ってひどい言葉もいっぱい浮かんだ。でも、なんか、この際はっきりした方がいいのかなって、そう思う自分もいる。浅羽くんにしたら迷惑かもしれないけど、私にしても、いいことなんか何もないかもしれないけど。そう思うとそれはそれで怖い。とりあえず私は頭を抱えるしかなかった。
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