いろいろ考えてみるんだけど、答えは出ないまま。好き同士ならいいじゃん、それは分かるんだけど、でもモヤモヤする気持ちはどんどん大きくなっていく。



「で。何が、不安なの?」



放課後の教室で向かい合った友人は面倒臭そうに私にそう尋ねた。何が不安、って聞かれてもわからない。この、もやもやする要素は言葉に出来ないような気持ちは、友人には伝わらない。悠太くんが好きじゃないわけじゃなくて、むしろ、大好き。話し掛けてくれたりすると嬉しいし、悠太くんの姿を見ると格好良いなってときめきもある。でも、何か違う。悠太くんが私を、そう、思ってくれてるって知ってから意識の仕方が変わった気がする。嬉しいことなのに、なんか、なんなんだろう、どうしたらいいのかわからない。



「どうせ、浅羽みたいにモテるような男が私みたいな奴を好きになるとかありえないとか思ってるんでしょ」

「…思ってる」

「もうさ、中学生じゃないんだから認めなさいよ。相手の気持ちをちゃんと知りたいなら、自分の気持ちを伝えなさい!」



さぁ行ってこい、と私の背中を押す友人。でも、と私が友人を見ると、早く行かなきゃ帰っちゃうよ、って。どこにいるかわかんないのに…そんな風に考えながら取り敢えず階段を下って下駄箱に向かう私。もし、もし悠太くんに会ったら、私、告白するのかな、って、そう思うと不安と緊張が生まれて、膨らむ。友人に言われたことを思い出してみる。簡単に言ってしまえば、私、かなり戸惑ってるんだと思う。私なんかを好きになってくれるなんて、現実味がないっていうか、やっぱり、ありえないっていうか。でも私が悠太くんを好きなのは本当のこと。会いたくないような、会いたいような…ぐるぐる回るいろんな気持ち。



「むむむさん」



廊下に響く優しい声に、私の足はピタッと止まって、ゆっくり振り向いた。予想した通りの人。頭に浮かんだ通り、そこには悠太くんが立っていた。立ち止まった私に近付いてきてくれて、帰りですかって、私に問いかける。もう、緊張と不安でドキドキが止まらなくて、何を話してるのかも自分でもよくわからない。自分が言ってる言葉が会話として成立してるのかもわからないのに、告白、なんて…って、思ったんだけど。静かな廊下、特に会話もないまま向かい合う、この瞬間しか、ないような気がしてた。



「あ、あの…」



緊張しないわけない。怖くないわけない。フラれないって言われてたって“もしかしたら”が頭に浮かぶ。でも、友人が言ってたみたいに「相手の気持ちをちゃんと知りたいなら自分の気持ちを伝えなさい」って、それもそうだよなって思う。悠太くんは何も言わずに私を見てる。…やっぱり言えない、なんて、今さらそんなこと言えない。言うしかない、もう、今しかない、って覚悟を決める。



「あの、わたし…悠太くんが……す……す、き…です…」



生まれて初めての告白。声が震えたのが自分でもわかる。それに、めちゃくちゃ小さい声になった。静かな廊下だからそれも響いて、私のドキドキも最高潮。緊張、不安、でも言っちゃったっていう、小さな達成感。悠太くんの顔を見れないまま、私は上靴をじっと見詰めて鞄を握り締めた。



「知ってました」



…と、悠太くんがそう言った。知ってました、って、そう言った?バッと顔をあげたら悠太くんはじっと私を見ていて、それから、



「俺もすきです」



そう言って、少しだけ顔を俯かせた。照れてるのかな、って思うと私も恥ずかしくなる。私だけに見せてくれる顔なのかな、とか、悠太くん、本当に私のこと好きだったんだ、って色んな気持ちがぐるぐる。そんな現在、悠太くんとはバッチリ目があってて、恥ずかしくて小さく照れ笑い。
不安なんてもうどこかに吹っ飛んでいった。どうしてあんなに不安だったんだろう、ひねくれちゃってたんだろうって。切り替えの早さに自分でも呆れちゃうけど、でも、幸せだからいっか、なんて。



「帰りましょうか」

「あ、うん、そうだね」



向かい合った私と悠太くんの間に流れていた生暖かい空気をさらっていったのはそんな言葉。不思議な空気。不思議な気持ち。今まで何度か一緒に帰ることはあったけど、それとはまた違う感じ。なんかもう幸せだなぁって、それを噛み締めながら私は、悠太くんの隣を歩くのだ。


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