風邪はもう結構平気。頭痛や喉の痛みは多少残ってはいるけど、学校を休むほどのものでもない。
「…おはよう、もう大丈夫?」
「おはよう、うん、大丈夫」
下駄箱で会った悠太くんがいつもみたいに挨拶してくれて、私も挨拶。休み明け一番のおはようが悠太くんなんて幸せだなぁって事を考えたのは内緒。悠太くんはそのまま塚原くんたちと一緒に歩いていって、昨日のことを聞けなかった。プリント持ってきてくれたのって悠太くん?…って、違ったときの事を考えたら普通に聞きにくい。
そんなことを考えながら私も教室に入る。先に来ていた友人は携帯から顔をあげておはよーって挨拶してくれた。後ろの席を向いて私が座ると「もう大丈夫なの?」って心配してくれて、やっぱりちょっとくすぐったい。心配されるの慣れてないからなぁ…って思いながら大丈夫だよって答えたら「ならいいけど」って返ってきた。…うん、大丈夫なんだけどね。
「そういえばさ、昨日プリント届いた?」
「あ、うん届いてたみたい…それ、聞きたいんだけど…」
「届いてた“みたい”?」
「え?うん、寝てたから私は気付かなかったんだけど…」
「何してんだよ起きてろよ!」
呆れたように怒り出した友人に戸惑う私。え?なんで怒られたの…?ってポカン。友人は眉間にシワを寄せてため息。体調悪かったから寝てただけなんだけなんだけどな…確かにちょっと寝過ぎたかもしれないけど。
「昨日浅羽が届けに行ったんだよ?」
「…え、やっぱりそうなんだ」
「わかってたの?」
「お母さんが“綺麗な男の子が来てくれた”って言ってたから、もしかしたら悠太くんなのかなって」
やっぱり、来てくれたのは悠太くんがだったんだ。それならお母さん起こしてくれればよかったのに!なんて、今さら。それにそんなことお母さんに言ったら色々聞かれて面倒臭いことになりそうだし。そもそも私が会いたいだけで付き合ってるわけでもなんでもないんだから、ねぇ。……会いたかったんだな、私。
「私が行こうかと思ってたんだけどねー」
「そうなの?来てくれればよかったのに」
「いやいや、満場一致で浅羽だったから。そんなの浅羽が行くに決まってるじゃん」
「…満場一致?どういう状況…」
「そのままだよ馬鹿」
いやいやそのままだよとか言われても…。全く想像できない状況にハテナを飛ばしまくる私。何故だか更に呆れた友人は、私に見せ付けるように大きくため息をついた。
「気付いてないの二人だけ!ほんっとイライラするわ…」
そんな友人の再度のため息と共に鳴り響くチャイムと教室に入ってくる先生。
…――私だってそんなに鈍感じゃない。友人が言ったこと、わからないわけじゃない。わからないわけじゃない、けど、信じられるわけない。え、嘘だよねまさか、そんな、悠太くんが…と、私の頭をぐるぐるするのはそんな事ばっかり。ドキドキする胸はもうしばらく落ち着きそうにない。
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