「大丈夫か?」
例の頭痛に悩まされた私。サンジが気付いてくれてチョッパーを呼んでくれたからだいぶ楽になった頃、温かい飲み物を持って来てくれたサンジがそう声を掛けてくれる。布団から顔を出して上半身だけを起こす。「うん、大丈夫」と声を発そうとしたけど上手く出ずに音が滑り落ちただけだった。
「ココア、飲めるか?」
「ん、うん」
「そっか」
サイドテーブルにマグカップを置かれて、それを手にとる。あたたかい湯気が顔に掛かってそれだけで温まった。
「ありがと、サンジ」
「レディの……。いや、むーちゃんのためなら」
相変わらず煙草を銜えたサンジはニッと微笑む。それにつられて私も頬を緩めた。こくりと一口。甘い匂いのように広がる甘さ。それでもどこかほろ苦さを感じた。
「おいし……」
「おれのオリジナルブレンドだ」
誇らしげに笑むサンジを視界の端に二口、三口とココアを飲み進める。その内底が見えてしまい、それに気付いたサンジが「おかわりは?」と尋ねてきた。「下さい」と飲み干してしまったマグカップを差し出す。嬉しそうに笑ったサンジが視界に入る。
「野郎共には内緒な」
笑う三日月に人差し指を当てて、ウインクを飛ばしたサンジ。一つ頷けば「良い子だ」と頭を滑るサンジの手。頬に熱が籠るのを感じながら私は俯いて部屋を出て行ったサンジの帰りを待った。
宇宙を孕む世界。
(まるであなたはそんな世界)
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