「最近ゆっきーといい感じだよねー!」



なんて軽い調子で私の肩を二度叩いたのはもう大体想像できると思うがその通り橘くんである。今日もまた私が買ってきたお菓子を食べながらお調子者トーク。ちょっと高かったんだよそのお菓子…って言っても聞かないだろうから私も一緒に食べる。私のなんだけどね。



「なんか?よく一緒に歩いてるみたいだし?いいじゃんいいじゃん!」

「一緒に歩いたり…はしてるかもしれないけど」

「ほら!ほらもういい感じ!もう一回告白すればいいじゃん!」

「するわけないじゃん」



一緒に歩いたりしてるだけでいい感じ、とかそんなの、なんか、別にいい感じではないよね?って思う。だって男女で一緒に歩いてる姿なんてよく見掛けるし、ねぇ?祐希くんと、一緒に歩いてるだけで、ねぇ?…って、色々思ってみるんだけど、自惚れに似た感情も少しだけ沸き上がってくる。だって、浅羽くんと並んで歩く女の子ってあんまり見たことないような気がして。



「告白すればいいじゃん!絶対面白いから!」

「面白いからとか普通にやめて。っていうか本当にするわけないから告白なんて」

「なんで!呼び出ししたらいいじゃん!協力するし!」

「楽しんでるだけだよね?面白いからとか思ってるだけだよね絶対」

「そうだけどさー」



そうだけどさーって、普通に言っちゃったんだけど。友人二人もそうなんだけど皆は私の行動を面白がっている。私が告白して玉砕したあの日からずっとそんな気がして何だかかなり惨めな気分。



「ゆっきーモテるんだから早くしないと取られちゃうって!」

「私より可愛くていい子はいっぱいいるんだから、それはそれで仕方無いよ…っていうか最初から私に可能性なんか無いわけだし」

「なんで?」

「なんで?って…呼び出して告白して玉砕してるんだよ私」

「呼び出してゆっきー現れたんだからいい方だって」

「どういう意味」

「だってゆっきー、いつも面倒臭いからって呼び出しされても絶対行かないし」



ケロッと言ってのけた橘くんは「おいまじでか」ってそんな私の反応に気付かずにそんなんだからダメなんだよなーってため息を吐いた。橘くんには色々言われたくないけどそこは呑み込んで。若干というかかなり動揺した私だったけどなんとか落ち着こうと「調子に乗るな自分!」って自分に言い聞かせる。本当は橘くんに、聞き間違いじゃないかどうかもう一回聞き直したいくらいだけどそれはできなかった。



「あの時さー、めちゃくちゃ暇だったからゆっきーが呼び出されたから行ってくるって行ったんだよねー」



腕を組みながらうんうん頷いている橘くんがそう言った。そうだよね、どうせそんなもんだよね…ってちょっとだけガッカリしてみたり。いや、もちろん期待してたわけじゃないんだけどちょっとくらいもしかしたらなんて思っちゃうよね。一瞬でももしかしたらなんて思った自分が恥ずかしい。誰ですかとか言われたのにそんな都合のいい「もしかしたら」なんてあるわけないじゃんね。
そんな私の微々たる落ち込みに気付かない橘くんはどんどん話を進めていく。



「だから告白すればいいじゃん!」

「誰が?」

「むむむさんが!」

「誰に?」

「ゆっきーに!」



その言葉言ったの私じゃないんだけど、と顔面蒼白で私の後ろをみればそうだよねそうなんだよね、やっぱり浅羽くんだよねって泣きそうになった。視界に浅羽くんを入れた橘くんも間を置いたその後、ちょっと焦ったように「おっすゆっきー元気にしてる!?」なんてわざとらしく言うから呆れてため息が漏れた。



「もうチャイム鳴るから千鶴連れていきます」



じゃあまたむむむさん!って星を飛ばしてきた橘くんに若干なりとも殺意が芽生えた事は言わずとも察してほしい。ここで私に二度目の終わりが見えた事を誰かに聞いてもらいたくなった。友人二人には言えないけど、やっぱり二度目の終わりはさっきのあの瞬間だったと思う。





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