時間が経つのは早くて、遅い。まだもう少し時間がある、なんて思っていれば約束の時間はもうすぐそこ。荷物を詰めた鞄を握り締めて、いざ教室を出ようと足を進める。そこで気付いたんだけど私どこで浅羽くんと待ち合わせするんだろうか。…待ち合わせ、って、なんかむず痒いけど。それはまぁ一人で照れるだけだとして置いておいたとして、私は一体どこで浅羽くんに会ってどうやって一緒に帰ったらいいのかが分からない。フラフラしながら何となく隣の教室を覗いてみたりして、でもそこには浅羽くんは居なくて何もなかったみたいに通りすぎる。…どこにいるのかなぁ、って考えながら歩いていると、目に映る上靴。下を向いていた視線を上げると浅羽くんがいて、お互いに小さく「あ」って言葉を洩らした。



「…えっと」



なんて言えばいいのかわからず言葉が詰まる。帰ろっか、とかそんなフランクに言える感じでもないし、しばらく目が会ったまま見つめ合うのは何だか照れ臭かったけど、浅羽くんが私の隣に並んでくれてゆっくり歩き出した。
ぎこちない、とでも言うのだろうか。不思議なことに気まずいだなんて思うことはなくて、なんか、なんていうか変な感じ。ドキドキしてる私の隣を歩く浅羽くんは何も話さないけど、こうやって同じ時間を共有してる不思議。



「本屋に寄ってもいいですか」

「あ、うんいいよ」



並んで歩く祐希くんの足はとても長くてそれから細い。いつもと少し違う道を歩いて浅羽くんの目的である本屋に到着すると、迷うことなく新刊コーナーに向かう。着いてっていいのかな、ってちょっと不安になりながらも少し後ろを歩いた。すぐに2冊の漫画を手に取ると、他の漫画も気になるのかじっと眺めている。



「迷ってるの?」

「すみません時間かけさせて」

「え、いや、それは全然いいんだけど。どんどん悩んでくれていいんだけど」

「じゃあ遠慮なく」



そんな浅羽くんの横で私も適当に漫画を手に取って、裏に書かれているあらすじを読んでみる。普通におもしろそうなんだけど、現時点で40巻とかこれ今更揃えられないよねぇ…。かといって出たばっかりだと続きが気になっちゃうし。私って漫画に向いてないのかもしれない…と、そんな横で浅羽くんも漫画を選び終えたらしくお金払ってきますね、とレジに向かっていった。私は頷いて本屋の出入口で浅羽くんが来るのを待った。



「お待たせしました」



行きましょう、ってそう言った浅羽くんに落ち着いていた胸がまた跳ね始める。お待たせしましたって、なんか待ち合わせしてたみたいな勘違いを起こしそうになる。なんか、なんていうか待ち合わせとかってめちゃくちゃ青春っぽい気がする。実際はそんなんじゃないんだけどそんな気持ちにもなっちゃうよねぇ。



「もうこんな時間…」

「あ、ほんとだ」

「本屋にいる時間が長かったみたいですね」



祐希くんの言う通り、悩んでる時間が少し長かったようで、空は綺麗なオレンジ色になり始めている。そこからは特に会話が弾むこともなく、ただ並んで道を歩くだけ。それでも幸せなんだからさ、私ってめでたいやつだなぁって思う。じゃあねまた明日って小さく手を振ると、今日はすごく幸せだったなぁってそんなことを感じた。


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