そう言えば昨日はここで浅羽くんから挨拶してくれたんだよな…って既に思い出となった出来事を何と無く噛み締めてみる。今日は言ってくれるかな、いやいやそんなわけないよ調子に乗っちゃダメだよ、なんて自分に言い聞かせながら教室に入る。わかってはいたけど、浅羽くんに会わなかった事を少しだけ、ほんの少しだけ残念に思った。いや、本当に期待はしてなかったんだけどね、って自分に言い聞かせながら。
教室に入るといつもみたいに賑やかっていうかとても騒がしい。朝からみんな何話してるか分からないけどとにかく楽しそうだ。全然関係ないけどどうやら今日は日直らしい。後ろのあんまり話したことのない男子と日直なのだけど、まぁなんとかなるだろう。



「………」



と、思っていたのだけど。後ろの少年は昼までの授業を終えた時点で、体調不良を訴えて返ってしまっていた。あと少しなんだから一人で頑張れと言った担任の先生に私は渋々頷いた。まぁあと二時間だし、なんとかなるだろう。黒板消してノートかプリント集めて、日直日誌書いてそれで終わりなんだから一人で出来ないわけじゃない。後ろの少年は取り敢えずフラフラなままお昼まで頑張ってくれたんだから寧ろ褒め称えてあげるべきなのかもしれない。
五時間目が終わって、今から職員室に、数学の先生がこの間回収したっていうノートを取りに行く。早く行かないと次の時間に間に合わないから急いで持ちに行く。それにしてもクラスメイト40人分のノートって結構重いから気合い入れないと。



「少し重いかな」

「大丈夫です、頑張ります」

「そうか無理するなよ」



両手に抱えたノートを落とさないように腕に力を入れる。落とさないように、一応全部を私の方にもたれかけさせてはいるんだけどこの体勢も結構つらい。でも早くしないといけないから取り敢えず頑張って歩く。



「大丈夫?」



と。私に救いの声を掛けてくれたのはクラスメイト。クラスメイトね浅羽くん。



「手伝うよ」

「え?あ、いいよいいよ!」

「重いでしょ」

「で、でも持てない訳じゃないし…!」



と、私の遠慮もスルーしてその手は半分くらいのノートを持ってくれていた。なんかごめんねと謝れば、職員室に用事あったしついでだよって。ついでだとしても嬉しいよね、私なんかを手伝ってくれるなんて浅羽くんって本当に優しいと思う。教室まで特に会話はなかったけど、教室に入ると配布まで手伝ってくれて私はまたその優しさに惚れそうになった。浅羽くんがモテるのがよくわかる気がする。こんなに気遣いが出来るイケメンなんてそういないんじゃないだろうか。そんなことを考えた六時間目。授業の内容はほとんど覚えていなかった。


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