朝、会ったらおはようって言って、夕方、会ったらまた明日って、何だか凄く幸せな毎日を送っているような気がする。私にはもうこれで十分。友達っぽいってこういうことなんだって何と無くわかった気がするし。



「私にはあんたの気持ちがわかんないわ…」

「友達止まりにも程があるでしょ」



はああって大きな溜め息を吐いた二人に、私も小さくため息。この二人にはもう何度か言っていると思うんだけど、私は浅羽くんと友達になれたって事だけで十分なのだ。それ以上なんて望んでない。二人は一体何を期待しているのだろうか。…っていうか、私と浅羽くんに友達以上の関係を望んでいるのは分かってるんだけど。



「むむむさんいるー?」

「うるさいの来たよ」

「あ!むむむさん!」



私がいるの分かってて教室に来たんだろ、って思うけど敢えてその言葉を呑み込んでいつも通りにする。跳ねるように私のところにやってきたのは橘くんで、やけにキラキラした表情が眩しい。なんか嫌な予感がするんだよねぇ。彼が楽しそうな時はだいたい決まって私が何かに巻き込まれる時なのだ。



「今日はゆっきー、一人で帰るみたいなんだよねー」

「そうなんだ」

「どうせむむむさんも一人でしょ?」

「どうせって言うな」

「あ、一人なんだ!じゃあゆっきーに言ってくるから、先に帰っちゃわないように!」

「ちょっとストップ」



私が橘くんの腕を掴んで前に進むのを阻止すると、え?ってキョトンとした顔を見せる。何で俺呼び止められたの?みたいな、そんな顔してるけど最初からの一連の流れ、全てがおかしい。



「おかしいでしょ今の流れ」

「なんで?どっちも一人なんだから一緒に帰ればいいじゃん!」

「橘くんが良くても私と浅羽くんが良くないでしょ」

「ゆっきーはいいって言ってたよー?」

「…え、ほんとに?」

「本当だって!ゆっきー意外とノリノリだから!じゃあそういうことで、もうチャイム鳴るから行くわ!」



私がぱっと手を離した隙に橘くんは走り去っていく。巻き込まれた、と言えばそうなんだけど。実際、残された私に残るのはフワフワした気持ちと少しの緊張感。私と橘くんの行方を見届けた友人二人の元に戻ると、ニヤニヤしたまま私を見た。何かいいことあった?って、そんな二人にさりげなく報告。今日浅羽くんと一緒に帰ります、って、言ったら二人は物凄い笑顔。



「なにそれ!ちょっ、私、後ろから着いていこうかな!」

「私も着いていきたいけど今日部活なんだよ!うわあ、休もうかなー…」

「なんか尾行されるっぽいんだけど絶対やめてね」



つまんねー!って、二人はワァワァ言うけど私にしてみれば尾行なんて絶対されたくないに決まってる。チャイムが鳴って皆が自分の席に着いたら英語の授業が始まった。内容は右から左に通過していくだけで頭には全く入っていかない。一緒に帰る、ってそのことで頭がいっぱいだ。何を話そうかなぁとか、何か話せるのかなぁとか。ドキドキしてくる気持ちを抑えながら黒板に書かれている文字をノートに書き殴った。


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