今日の放課後は暇を潰すために図書館に来てみた。さっさと帰ればいいんだろうけど、今日は帰っても誰もいないから時間潰し。友達の一人はバイトだって先に帰っちゃったし、もう一人は実は部活やっててそっち行っちゃって、私はバイトも部活もしてないからまぁこうするしか無いわけで。図書館にある雑誌を適当に読み漁っている。ペラペラ捲りながら、内容は特に興味もないから自然と欠伸が出る。机に肘をついて、右手に顎をのせてもう片方の手で欠伸をする口元を隠す。なんか眠いなぁ…って、完全に油断してた私の隣に座った人物を見てこの油断しきった私の態度を激しく後悔することになるのだ。



「どうも」



リュックを机に置いて私の横に座ったのはどこからどう見ても浅羽くんだったのだ。若干パニックになりつつ平静を装った私は「どうも」と普通に返事。緊張する私を気にすることなく、浅羽くんも鞄から出してきた雑誌を読み始めた。…あ、アニメージャ…。何か喋った方がいいのかな、とか考えるけど浅羽くんは雑誌に夢中みたいだし、なんとなく勇気もなかったから私も雑誌をペラペラ捲る。ちらっと横を見てみると、まさかの目が合うっていう事態に焦る。



「図書館とか珍しいですね」

「え、そうかな…浅羽くんも珍しいよね」

「悠太が部活してるから待ってようと思って」



あ、そうなんだ…って会話終了。なんかほんと、もうちょっと会話出来るような返事をしなかった自分に後悔しながら、だからって私から話を振るにも何を話したらいいのかわからない。っていうか浅羽くん、漫画とかアニメとか好きなのかな。ああいう雑誌買うくらいだから好きなんだろうなぁ。



「むむむさんは部活やってないんですか」

「私?やってないよ」

「そうですか」

「うん。浅羽くんは?」

「漫研です」

「漫画研究部?」



頷いた浅羽くんに納得。相当好きなんだろうな、漫画とかアニメとか。初めて知る情報だったからちょっと嬉しくなる。意外っていうか、なんか浅羽くんって何に対しても興味なさそうだし、興味あるものが分かったってだけですごい収穫なような気さえしてくる。あの頃の近寄りにくいあの感じって、遠くから見てたからなのかなって。



「漫研って何してるの?」

「漫研読んだり書いたりしてるんじゃないですかね」

「…してるんじゃないですかね?」

「漫研部員とは名ばかりの存在なので」

「自分で言っちゃうんだね」



ペラペラと捲られていくアニメージャ。私も手元の雑誌をめくりながら、さすがにもう話すことないよなぁって思いながら最後のページを閉じる。



「えっと。じゃあ…あの、先帰るね」



チラッと私を見た浅羽くんに、気付いたんだけど私何でこんなに報告してるのかなと不安になった。祐希くんにしてみればきっとどうでもいいことで、いやでも、隣に座ってたわけだし、ちょっとだけど会話だってしたし…変な流れでもなかったよね、って自分に言い聞かせて鞄を手に取った。



「じゃあまた、明日」



そう言った浅羽くんに私はめいっぱい頷いて、うんじゃあばいばい、ってそうやってギュッと鞄を握り締めた。図書館を出て、私は跳ねる胸を抑えながら喜びを噛み締めた。



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