友達ってなんだろう。突然そんなことを考える。今、私の机を囲うようにして話し込んでいる二人は私が唯一自信を持って友達だと言える人。橘くんも、ああやって話し掛けてくれたりするし普通に話もするし友達なんだろう。じゃあ、友達になった浅羽くんは?友達にはなったんだけど、でも友達かどうかは正直自信がない。言葉で友達だとは言ったけど内容が全くないわけで。友達になりましょうって、言われたからなったんだけどね。友達らしいことってひとつもないような気がする。前よりは話すようになったけど、でもなぁ。



「おっはよー!」

「おはよ」

「あれ?元気ない?風邪?」

「君が元気すぎるんです」



もう毎朝恒例なんじゃないだろうか。慣れた私はいつも通りに返したつもりだったけど橘くんにはそうは映らなかったらしい。心配してるのかしてないのかよくわからない表情で私の顔を覗き込んでいるけど、私はいつもと変わったところはひとつもない。ただ少し考え事をしてただけだよって言うと「ゆっきーのこと!?」なんて調子に乗ってきたから「いや違うし」なんて軽くあしらってやった。あながち間違いでもないんだけど。いやでも私が考えてたのは浅羽くんのことじゃなくて友達って何だろうってことだ。



「もうほんっとつまんねぇ」

「進展ないわけ?」



教室に向かうと友人二人が既に私の席で何か宿題広げながらそんなことを言ってきた。ないよ、って即答すると二人はそりゃもう盛大な溜め息を吐いてきた。何を期待してるんだろうか。メールアドレスの交換とか期待してるんだったらそれはもうきっと一生無理だろう。



「とりあえずそこ私の席なんだけど」

「だから?今はそんな話をしてるんじゃないの、わかる?」

「あんた友達になったとか言うくせに友達らしいこと何にも聞かないんだけどどうなってるわけ!?」



だから?って、いやだからそこ私の席だから退いてほしいんだけど…なんて言えないんだけど。二人は私がさっきちょこっと考えていたことをズバズバとぶつけてくる。いやね、私だってちょっとくらい考えてるんですよ。今の状態に満足してる、って、言い切れるわけじゃないけどそこまで何かを求められるような相手でもない。



「友達なんて人それぞれの感覚なんだから、浅羽くんが友達って思ってくれたんならこれでもちゃんと友達なんだよ」



って。私がそう言うと二人は不服そうな表情で私を見てた。先生が入ってきて自分の席に戻っていったけど、なんか、自分の言葉に納得したのは自分だった。そうだよ、これでも友達。欲張りになっちゃいけないってわかってるから、なんかもういいんだよこれで、って。思いながらちょっとだけ、ほんのちょっとだけ淋しいとか思った事は誰にも言えないなと思った。


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