並んでいる紙に大きく『1』と書かれているものを手に取った。
紙を開くとそこに書かれていたのは『足が速い人』で、私はそれに当てはまる人を探しに走る。



「おっ、借り物?何引いたのー?」



自分のクラスの場所に向かっていた時、私を引き止めたのはその辺を歩いていた橘くんと祐希くんだった。
私は持っていた紙を二人に見せると、クラスの方から「おいお前ら邪魔すんな!」とか「構ってないで早く!」なんて声が聞こえてくる。



「あ、うん、これなんだけど」

「足が速い人…ふーん……よーしここは俺が我がクラス優勝の為に足止めでも…ってゆっきー!?」



腕を広げて私の進路を邪魔する橘くんを避けて自分のクラスに向かおうとしたとき、私の視界は揺れる。
周りからキャー!なんて声が聞こえてきて、何が起きたか解らなかった私も一瞬で理解。
私の腕は祐希くんの手にガッチリ掴まれていて、そのまま彼は私を引っ張りゴールに向かって走っていた。



『おーっと青組の選手!まさかの敵チームの選手の援護により1位に輝きました!』



祐希くんのおかげで、放送の通り1位でゴールテープを切っていた。
周りからは色んな歓声やブーイングが沸き起こる。



「え、ゆ、祐希くん…」

「何ですか?」

「何ですか、って…私、一番になっちゃったよ」

「おめでとうございます」

「あ、ありがとう…じゃ、なくて、」



祐希くんは自分がやった事を悪びれる様子もなく、私を見て小さく首をかしげた。
嬉しいんだけどいいのか悪いのか。
きっと、っていうか絶対良くないんだけど。
だって私と同じレースには祐希くんのクラスの女の子も出ていたんだから。



「ゆっきー何しちゃってんの君はー!!」

「え、だって足の速い人って書いてあったし」

「だからって!隣のクラスだから!おかげで俺らのクラス2位になっちゃったから!!」



迫り寄ってきた橘くんは祐希くんの肩を掴んでガタガタと揺らす。
橘くんの言うことは正しいはずなんだけど、祐希くんは特に気にすることもないみたいで。
ただ小さく「すいませんでした」と呟いた声だけが聞こえた気がした。


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