浅羽くんと友達になった。それはいいんだけど、友達になった浅羽くんよりいつの間にかここにいる橘くんとの方が仲良くなっているような気がする。仲良く、は少し語弊があるかめしれないけど。いや、別に橘くんと仲良くなっている事に対して否定をしたいわけではない。
「お茶買ってきて」
「あ、私ミックスジュース」
「俺もミックスジュース!」
「何で私が行くこと前提なの。何で普通に橘くんまでいるの」
「細かいこと気にしてると禿げるよ、ほら早く、喉乾いた」
友人二人と、ちゃっかりそこにいた橘くんに100円玉を渡されて何故か私がパシられている。いや、いいんだけどさ…。小銭を握りしめて私は教室を追い出されるように自販機に向かう。ああ自分のお金持ってくるの忘れてた、これじゃあ本当にただのパシりじゃないか。
自販機と向かい合う。お茶とミックスジュースを一つ買ったところでまさかのミックスジュースが売り切れ。え、これどうすんの。焦りはしないけど微妙に困る。
「どうしたんですか」
「うお、びっくりした」
「すみません」
振り返るとそこに浅羽くんがいた。うお、なんて女子っぽくない声が出ちゃったけど私からは「キャア」なんてそんな声は出てこない。こういうところが女子らしくなくてダメなんだろうな私。キャアって言えるようになってたなら浅羽くんも少しくらい私の事なんか、なんか今と違う風に思ってくれてたのかな…なんてね。悲しくなるからそんなこと考えるのやめよう。
「ミックスジュースが売り切れちゃって」
「あ…ほんとだ…」
「…あれ、浅羽くんもミックスジュース買おうとしてた?」
「はい」
「え、ごめん」
私が友人のミックスジュースを差し出すと、浅羽くんはいいですよって自販機を吟味し始める。私も橘くんの分どうしようかなぁって悩んでる。このミックスジュースは橘くんには渡らず恐らく友人が飲むだろう。橘くん何がいいかな…なんて考えていると浅羽くんがいちごオレを押す。あ、なんか意外、チョイスが可愛い、なんてときめいたことは内緒です。
「っていうかそんなに飲むんですか」
「や、友達二人と橘くんの分です」
私がそう言うと浅羽くんはなにも言わずにじっと私を見た。え、微妙に緊張するんだけど。めっちゃ見られてるんですけど。
「えっと…ミックスジュース以外で橘くんが飲みそうなのってどれですか」
視線を浅羽くんから自販機に移す。お金を入れて浅羽くんをチラ見すると、私の隣で、本当に真隣でじっと自販機を眺めている。浅羽くんが押したのはまさかの牛乳。牛乳って。
「これで少しは伸びるんじゃないですか」
「それは…身長の話?」
「むむむさんは千鶴のことそう思ってるんですね」
「えっ…」
取り出し口から取り出した牛乳を私に押し付けて「早く戻らないと休憩終わりますよ」って声をかけてくれる。何だろうこの罪悪感は。橘くんごめん、だけど君の身長は私の友達とそんなに変わらないんだよ小さいと思っちゃったんだよ、と心の中で謝りつつ牛乳を渡すとやっぱり激怒された。これは浅羽くんのチョイスなんだけど…とは何故だか言えなかったけど。
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