今年もやってきたこの季節、もう今日は夏祭りの日。
去年は私服での参加だったけど今年は岬ちゃんと話して浴衣でお祭りに行くことにした。
「やっぱ浴衣可愛いね」
「浴衣が、ね」
「そんな事言ってないでしょ、むーが可愛いの!」
「どう見ても岬ちゃんの方が可愛いよ」
そんな会話をしながらお祭りの会場に向かう。
浴衣だからちょっと歩きにくいけど、それも浴衣だから仕方ないにって二人で笑った。
お祭り会場はまだ時間が早いにも関わらずたくさんの人がいる。
ズラッと並んだ屋台を見ながらテンションも上がる。
いっぱい食べようね、なんて気合いを入れ直して取り敢えず唐揚げを食べる。
「むむむさーん!」
「…あの声は」
「橘くんたちだ」
前を元気に走ってくるのは、毎度お馴染みとも言えるくらいこういう場所で会っている彼らだった。
なんとなく会うのかな、とは思ってたけど、ほんとに会うなんて。
橘くんたちはやっぱりいつもの5人で一緒に行動しているみたいだ。
「浴衣ですね」
「ほんとだ」
「夏らしいですねぇ」
「いいじゃん浴衣!浴衣!」
「テンション上がりすぎだろ」
相変わらず賑やかだ。
周りを気にせず、人混みの真ん中でこうやって騒いだりするのって彼らくらいなんじゃないかと思う。
その後の橘くんの「一緒に回ろう!」って言葉で私たちは一緒に行動することになった。
「唐揚げください」
「おい」
「いいよ」
「いいんですか」
「え、むーいいの?」
「いいよ、他にもいっぱい食べたいし」
「まぁそうだね、いいよ私のもあげる」
私の唐揚げを祐希くんに、岬ちゃんは塚原くんに渡す。
周りには沢山の種類の食べ物がたくさんあってそのどれもが美味しそうに見えてくる。
「ゆーたにもあげる」
「…まぁ元々むむむさんのだけどね」
「んじゃ俺から春ちゃんに!」
「ありがとうございます!」
「あ、要のなくなった」
「別にいらねぇよ」
私と岬ちゃんの唐揚げを皆で分けあっている横で私と岬ちゃんは次に食べる物を探す。
女の子っぽくないかなって思うけど、美味しいものいっぱい食べたいし。
「焼き鳥美味しそう」
「あ、いいね食べよっか」
「焼き鳥!」
「焼き鳥ー」
「お前ら自分で買えよ」
結局やっぱり学生だからお金の相談もして、4本入りの焼き鳥を2つ買って皆で分ける。
一本余った分は橘くんが食べていた。
他にも綿あめを買って皆で食べたり、橘くんたちは射的や輪投げなんかもしていたし、どうしようかなって金魚すくいで捕った金魚を眺めたりしていた。
浴衣はやっぱり歩きにくい。
帯で絞まってるからお腹もすぐにいっぱいになるし、足も疲れてくる。
履き慣れてない下駄を履いてきたのがダメだったのかもしれない。
普通のサンダル履いてきたらよかった、なんてそんな後悔したって仕方ないし今さらどうにもならないんだけど。
「少し休みましょうか」
「え、ゆうたんもう疲れたの!?」
「そうですね、普通に」
「何だよー祭りはまだまだこれからってときに!」
「お前は元気すぎんだよ」
「でもそうですね…僕も少し歩き疲れたんです。お祭りってついついはしゃいじゃいますから」
「私も休みたい。お腹いっぱい」
悠太くんの提案で、近くにあったベンチに座って休憩をとることにした。
浴衣って意外と暑い。
さっき貰ったお祭りのうちわで自分を扇ぎながら、疲れた足を休める。
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