星が見えるまでの長い時間、一体何の話するんだろうって思ってたけど学校の話とかで盛り上がる。
この5人って本当に仲良しなんだなって改めてよく分かったし、息もぴったりだから話を聞いてるだけでも凄く楽しい。
下らない話がどこまでも膨らんで、もうこのまま永遠に止まらないんじゃないかっていうくらい。



「そろそろ星が出てきたかな!?」

「だから外雲ってんだよサル」



星を見ようの会(橘くん命名)なのに、外は大いに曇り空。
私が家を出たときから曇ってたし天気予報でも1週間くらい前から曇り、天気予報によっては雨だって予報ばっかりだった。



「ただ集まりたかっただけですよね」

「千鶴がうるさいから」

「じゃあ何で私達呼んだのよ…」

「え、だって友達じゃん」



キョトンんとした橘くんにそうやって言われて、私と岬ちゃんは顔を見合わせて笑った。
そうやって、ちゃんと思ってもらえてたんだって、嬉しくて、照れ臭くて。
当たり前でしょ、みたいなそんな感じで言ってくれたんだから嬉しくないわけないんだ。



「あ。雨」

「これはもう七夕に星を見るとかいう話じゃないですね」

「織姫と彦星、残念だろうなー。雨だから会えないなんて」

「お前は本当にアホだなサル。ここは雨でも雲の上は晴れてんだから関係ねぇよ」

「ほー…!」

「さ…さすがです要くん!」

「その眼鏡は伊達じゃなかったってことですね」

「言われりゃそうだね」



納得したのは橘くんだけじゃなくて、松岡くんと祐希くん、隣にいた岬ちゃんもだった。
私も塚原くんに言われて気付いたんだけど。



「雨かぁ」

「うんでも、雨でもいいんじゃない?」

「けどさぁ、せっかくだから見たいじゃんー」

「ねー」



窓の外を眺めた橘くんと祐希くんが拗ねたようにそう言った。
けど、たまには雨でもいいんじゃないかな、って。
なんていうか、ねぇ、



「一年に一回今日しか会えないんだよ?織姫様と彦星様も私たちに見られて会うよりも、二人っきりで会いたいんじゃない、かな?」



と、言ったら皆が私を見て。



「お前そんなこと言うんだな」

「むーさん意外とロマンチストですね」

「けど確かにそうかもしれませんね」

「ぼ…僕もむむむさんに賛成です!」

「俺も!俺も大賛成!!」

「むー、可愛いこと言うねぇ」



って、しみじみ言われて。
なんか急に恥ずかしくなったけど、皆は私に賛同してくれた。



「よーっし、じゃあ短冊書こう!」

「だから笹ねぇって」

「ベランダに結んどきゃいいんじゃないですか」

「さすがゆーた」

「今頃、織姫様と彦星様は二人で楽しい時間を過ごしてるんでしょうねぇ…」

「そう考えると雨の七夕もいいもんだよね。さ、むー、私たちも願い事書こ」

「ん、書こ」



今年は何をお願いしようかな、なんて考える。
小さな願いはたくさんあるけど、どれもわざわざ短冊に書くには違う気がする。
だったら楽しい今を、ずっと続けていられたらいいなって。



「書けた?結びに行こ」

「うん」

「あーやっぱり雨に濡れる」

「祐希くん、それも雨ですから仕方ないですよ」

「お前ら…これ外すの俺なんだからな…」

「俺も織姫と彦星みたいにイチャイチャしてぇなぁーくそー!」

「肝心の相手の存在が全く見えてきませんけどね」



明日も明後日も、来年も、ずっとずっと。
こんな風に笑っていられたらいいなって、私はそんな未来を願った。


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