『明日は七夕!ってことで!明日は要っちの家集合!』
『バカじゃねぇのお前』
と、放課後にそんな思い付きを言い放ったのは橘くんで、当然の如く塚原くんの呆れた溜め息と共に拒否。
私と岬ちゃんは当然冗談だと思ってたんだけどどうやら本気だったらしく、夕方に悠太くんからメールが入ってた。
集合時間が書かれていて、もし暇だったら来てください、って。
岬ちゃんにメールをしたら暇だから行くって言ってたから私の家集合で一緒に行くことになったのだ。
「むー、塚原の家知ってんの?」
「うん、前に先生に頼まれてプリント届けに来たことあるんだ」
へぇ!って意外そうな表情を浮かべた岬ちゃんは何だか楽しそうに笑った。
どうせまた下らない事するんだろうね、って。
「いらっしゃい!また来てくれたのね!もう皆、要くんの部屋に集まってるから上がってちょうだい」
ニッコリ笑った塚原ママは、かなり久しぶりにも関わらず覚えていてくれたみたいで私の手を掴んではしゃいでいる。
相変わらずのテンション、相変わらず可愛いお母さんだなって思った。
階段を上っている時に岬ちゃんは「あれが塚原ママ!?」ってまた楽しそうに笑った。
ノックをすると賑やかな声がして、ドアを開けると既に皆はお菓子を広げて楽しそうにしていた。
何度か見てるけど私服姿の皆ってやっぱり何だか新鮮だ。
「やーっと来た!」
「まぁ適当に座ってくださいよ」
「汚い部屋ですけど」
「ここ俺の部屋だから」
岬ちゃんは塚原くんのベッドに座り、私も同じように隣に座る。
塚原くんの部屋は相変わらず綺麗に片付いている。
「っていうか塚原、あんたのお母さんめちゃくちゃ可愛いじゃん」
「…それ本人には絶対言うなよ」
「え、お母さん独占宣言ですか」
「違ぇよ!!そういうこと言うと本気にして調子乗るんだよ…」
「はっ…もしや要っち…自分以外の人に可愛いって言われたくないってこと…!」
「お前らも調子乗んなよ」
「どんな設定なの塚原親子!」
この感じだとけういう設定は前々からあるようで、盛り上がる5人に私と岬ちゃんは笑った。
「そういえば去年の七夕の日にも会いましたよね」
「あーそういえばそうだね。公園で」
「あのとき書いた願い事は叶いましたか?」
松岡くんがオレンジジュースを持ったまま私たちに問い掛けてくる。
あの時書いた願い事を思い出して、私は願い事以上の現実にいることが嬉しくなって私は大きく頷いた。
休みの日に塚原くんの家で、こうやって悠太くんたちと同じ時間を過ごせているんだから。
そして思うのが、私ってもう随分長い間ずっと片思いしているんだなってこと。
「岬ちゃんはどう?」
「私?私も叶ってるよ」
私を見てニッコリ笑った岬ちゃんに私は「良かったね」って笑いかける。
「今年は何をお願いしましょうかねぇ」
「千鶴のバカが直りますように」
「ゆっきーヒドッ!」
「笹の葉なんてないよね、要」
「あるわけねぇだろ」
賑やかな空気に胸が温かくなる。
「さぁ星は出てきたかな〜?」
「まだ早ぇよ」
「っていうかそもそも今日は何のために集まったの?」
「何のためにって…七夕ですから」
「星見るために決まってんじゃん!」
「外曇ってますけどね」
星が出るまでにはまだまだ時間がかかりそうな時間。
今から皆でいろんな事話したりするのかなって思うとわくわくする。
楽しそうだねって、笑った私に岬ちゃんは「たまにはいいかもね」って小さく笑った。
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