「あんた橘と付き合ってんの?」

「え、何言ってんの?」



朝からニヤニヤしている友人二人に言われたのはそんな言葉。ちょっと本当に意味がわからなくて、二人の話を聞いているとなんか最近私と彼が仲良くしているのをよく見かけるし、ってそういうことになったらしい。だがしかしそんな事はあるはずが無い。ないないないない、と全力で否定をすると「だよねー」って普通に笑われた。それはそれで複雑な気持ちだけど。私に彼氏はまだ早いってか。



「で、浅羽との進展は?」

「ありません」



だよねー!って心なしかさっきよりもテンション高めにそう言われた。何も起きないって分かってるんだけど地味に傷付く。確かに最近は橘くんと仲良くしてるように見えるようなことしてるかもしれないけど、実際は別にそんなに仲いいわけでもない…と思ってるんだけど、あれだけ話したりしてたらやっぱり周りからは仲良いんだねとか思われても仕方ないのかもしれない。



「やっほー!」



ほら来た元気な奴が。私のクラスでもお馴染みになりつつある光景に、クラスの男子が橘くんに私の場所を教える。橘は私を探しているとも何とも言ってないのに。まぁ彼がこのクラスに来る用事と言えば専ら私なんだろうけどさ。じゃあ私達あっち行くるねーって要らない気遣いを見せた。



「今日は何なの」

「朗報です!むむむさん今日ゆっきーと一緒に帰れるんです!」

「ごめんちょっと意味がよくわからない」



キラキラした瞳を全面に押し出すように、前のめりで私に要らない報告をしてくる。そのいきさつをテンション高めに報告してくれるわけだが、なんかもう滅茶苦茶。

『今日むむむさんと帰ってみない?』
『むむむさんって誰』
『俺が最近仲いい子なんだけど』
『ああ…あの人ですか』
『ね、どう?どう?』
『別にいいですけど』
『え!まじで!?ゆっきーまじで!?』

どんな会話だよ、なんて心からの突っ込みも彼には届いていないらしい。浅羽くんも浅羽くんだ。未だに私の名前すら知らなかったことはこの際置いておいたとしても、ノリが軽すぎるだろう。あの人ですか、って事は橘くんが言った人が私だっていうのは分かっているはず。過去に告白してフラれるより虚しい現実を突き付けられた私と一緒に帰るなんてどうかしてる。



「本当にバカじゃないの?一緒になんて帰るわけないじゃん、バカじゃないの?」



呆れる。何度も言うがバカじゃないのか。もうイライラしてきて私は橘くんから離れて教室に戻った。機嫌が悪い私を見た友人二人は珍しく私に気を使って何も聞かないでいてくれた。一緒に帰るなんて有り得ない。こんなに空気読めないやつだったんだと思うと本当に腹が立ってきた。



「え、ちょ、むむむさん怒った!?」



空気読めないやつだってことは最初から知ってたけど。


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