「おっはよー!」



うわあ来た。いつもの5人で歩いていたのにわざわざ飛び出してきて挨拶なんてしてくれなくていいのに。もう二度と私の前に現れないでくれ、なんて思考は次の日の朝には打ち砕かれたのだ。何て馴れ馴れしい(図々しい)人なんだ。そそくさと立ち去った私を見て嫌な奴だと思ってくれないだろうか。



「ってことでまずは作戦その一!」



なんてね。どうやら彼は冷たい私を嫌な奴だとは思ってはくれなかったようだ。昼休みに突然やってきて私の机にお弁当を広げた彼はそんな事を口にした。ってことで、って何だどういうことだ。作戦その一、って何なんだ。いい加減その勢いだけの行動は止めてくれないだろうか。彼は毎回毎回私をドン引きさせてくれるわけだが、それにもそろそろ気付いて欲しい。周りの子の視線も痛いよほんとに。



「やっぱりまずはゆっきーと話せるようにならなきゃいけないと思うわけよ、あ、その卵焼きちょうだい」

「話せるようにならなくていいし卵焼きあげないし」

「何言ってんの話せるようになんなきゃ何も始まんないしっていうかケチ!」

「何も始まらなくていいし、唐揚げくれるならあげてもいいけど」

「唐揚げは無理!うちの卵焼きと交換しよ!」

「それならいいよ」



最後何の話してるの私たち。卵焼きを交換すると、橘くんは美味い美味いとうちの卵焼きを頬張っている。橘くん家の卵焼きもなかなか美味しい。うちのお母さんの卵焼きほどじゃないけどね。



「ハンバーグ食べたいわー」

「あ、今日うちの夕飯ハンバーグって言ってた」

「え、まじ?今日行っていい?」

「馬鹿じゃないの?」



最初は浅羽くんと話せるようになれよとかそんな話だったのに、最後は何故だかそんな話。今日行っていい?とかなんなのもう、私たちそんなに仲良くなってないんだけど。そんなのお構いなしに「あっやばい次の授業始まる」なんて嵐のように去っていく彼を、私はただ見送るしかできないでいる。もう何なんだ本当に。


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