祐希くんと過ごした時間も終わり、悠太くんの部活が終わったみたいで帰ると言った。
用事がないなら私も一緒に、って誘ってくれたから一緒に帰らせてもらう事にした。
チャンスはもうここしかないのかもしれない。



「むむむさんも遅かったんですね」

「なんか、うん、教室で祐希くんと話してたらこんな時間だったんだ」

「あー…はい。なんかすみません」



何故か謝った悠太くんに全然大丈夫だよって伝える。
むしろ有難いくらいなのだ、最後のこんなチャンスをもらえて。
祐希くんにそんな自覚はないだろうけど。
私と並んで歩く悠太くんにほんの少し緊張して、話しながら前を歩いている松岡くんと祐希くんの背中を見た。



「祐希と何の話ししてたの?」

「…あ、うん、」



悠太くんの問いかけに、今しかないってそんな気がして。
松岡くんと祐希くんが前にいるのが何と無く恥ずかしいんだけど、そんなこと言ってる場面でもない。



「あの、悠太くん」

「…?」

「誕生日、おめでとう」



バクバクする心臓を抑えるように、何と無く笑って見せる。
悠太くんは一瞬驚いたような表情を浮かべ、それから私を見て、ありがとうって、そう言った。



「知ってたんですね」

「クラスの子が言ってたの」

「そうなんですか」



好きな人のことなのに何も知らないのは、少しもどかしいような気もするけど。
おめでとうって言えた事が、私にとっては一番嬉しいこと。
なんか、不思議な気持ち。
夢みたいだ、なんかもう、ほんとに夢みたい。



「むむむさんの誕生日は」



悠太くんの問いかけ。
私は自分の誕生日を伝えて、また少し緊張。
自分のことを知ってもらえるって、聞いてもらえるって幸せだなって思った。

もうすぐ皆との分かれ道。



「次は俺がお祝いする番ですね」



そう言った悠太くんの表情は、心なしかほんの少しだけ柔らかくなっていて。
これは、ちょっとだけでも期待していいのかなって。



「じゃあ、また明日。おやすみなさい」



バイバイって手を振った三人に私も小さく手を振った。
誕生日おめでとう、ありがとう、また明日、おやすみなさい、って。
家までの残り少ない道のりを、幸せを噛み締めながらゆっくりと歩いていく。


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