あの事件以来私は一人になった、わけではなかった。私あの子好きじゃなかったんだよねっていう子たちが何人か笑いながら私を褒め称えてくれたのだ。けどなんかもう全然嬉しくない。無くしてから気付くとはよく言うもので、あの時は勢いのまま思ってたこと言っちゃったけどそこそこ仲が良いと思っていた子の事を実はちょっとくらい好きだったんじゃないかと今さら思う。家に帰ってちょっとだけ後悔した。でも私か言ったことは嘘じゃないし、スッキリしたような気もするけどやっぱりどこかしっくりこない。学校休もうかななんて考えたけどお母さんが許してくれるはずもない。最終的に私を褒め称えてくれた子が何人か居たから一人にはならなかったけど、好きとか嫌いとかそういうのって結構面倒臭い。結局私を褒め称えてくれた子たちだって跡部景吾が好きな子たちで、やっぱり私は跡部景吾が嫌いだと思った。



「でさぁ朝練の時差し入れ渡したら受け取ってくれたの!」

「えーいいなぁ!私も持ってくればよかった…」

「私も忍足くんに差し入れ渡したよー」

「ずるいよー!」



朝からこんな話ばっかりだ。跡部景吾だけじゃなくて忍足なんたらもそういえばテニス部で人気なのかと思うと恨めしい。跡部景吾の人気が凄すぎて他の人が霞んで見えるけど実は他の部員もめちゃくちゃ強くて格好良くてモテるらしい。やっぱり話題の中心は私が嫌いな跡部景吾だが。
何だか無性に腹が立って授業中に跡部景吾について色々考えてみた。好みは人それぞれだがルックスはまぁ良いとしよう。運動神経も抜群なのは認める。頭が良いのも認める。金持ちなのも認める。何だか良いとこしかないじゃないかとそう考えると更に腹が立って来て、悪い所を考えようと思う。まずは性格。よく知らないが恐らく傲慢。よく分からないテニスのセンス。俺様の美技に酔いななんて笑いすぎて酔うわ。恥ずかしい奴め。あとは自己中で、これは性格ではないから跡部景吾が金持ちだと言うが実際に金を持ってるのは跡部景吾の両親だ。そうだそうじゃないか、きっとその財産を使って跡部景吾は優雅で豪華でムカつくような生活を送ってきたに違いない。そう考えるとなんか腹立つ。テニスも上手くなるだろう、頭も良くなるだろう、肌や髪も綺麗になるだろう、お金をかけられるんだから。そりゃ、性格も悪くなるだろう。納得。



「むむむ聞いてるのかー」

「すいません聞いてませんでした」



跡部景吾の悪口を考えてましたなんて言えるはずもなく、私はただ恥ずかしい目に遭った。自己責任と言われればそうだが何だか悔しい。跡部景吾は私の敵かもしれない。


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