生まれたときから全てを手にしている人がいるとしよう。そんな人が将来どうなるのかとても考えられないが、もしそんな人がいるとしたらきっと跡部景吾が一番近い存在なのだろう。地位も名誉もお金も全てが彼の手の中にある。考えてみれば世の中めちゃくちゃ不公平だが、私は跡部景吾みたいにならなくて良かったと心の底から思う。一度くらい経験してみたいような気もしなくはないが、私は跡部景吾みたいに目立ちたくはないしテニスの試合の度にあんな派手で恥ずかしい催しは絶対にしたくない。本人や周りの人はどう思っているかは知らないが客観的に見ればあれは恥ずかしい以外の何者でもないと思う。
育ちのせいかは知らないが跡部景吾は相当な派手好きだろう。登下校にリムジンやベンツを使うのは当然だし、なんかテニスやってるときも無駄に派手みたいだし。偉そうという表現がこんなにピッタリな人間はそういないだろう。あんなに堂々と胸を張ってムカつく奴を私は他に知らない。知っていたとしても跡部景吾を見れば可愛らしいと思える程度の苛立ちで住むだろう。跡部景吾は別格だ。私を苛立たせる天才。関わりないくせに見てるだけで苛立つとかある意味才能なんだろうか。



「俺様の美技に酔いな!」



たまたまテニスコートの横を通ったときに聞こえた謎の恥ずかしい掛け声。無駄にいい声で意味のわからない事を言っただけなのに周りの女子はどうしてあんなにもキャアキャアと言えるのだろう。彼なりのパフォーマンスなのかもしれないが恥ずかしくないのだろうか。美技に酔うどころかその恥ずかしさに酔いそうだ。ちなみに香水の香りに酔いかけているのは今現在のこと。



「今日も素敵だわ」

「跡部様と話してみたいわ…」



うっとりする女子に問い掛けたい。テニスの上手さ以上に目立つ跡部景吾のあのキャラのどこが素敵なのかと。ただ恥ずかしいだけじゃないのかと。乙女にかかったフィルターを綺麗サッパリ洗ってやりたい。綺麗サッパリ洗ったところでこの中にあれ恥ずかしいよねって言いながら一緒に笑ってくれる女子はいるのだろうか。もしいたらこんな私でも少しなは仲良くなれそうな気がするが、恐らくそんな子はいないだろう。
ちなみに最初に言ったと思うが私は別に跡部景吾が嫌いなわけではない。ただ物凄くどうしようもなく、凄まじく好きじゃないだけだ。


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