やっと辿り着いた目的地は、何もない空き地。もう何時間も歩いてきたような気持ちになるけど、時計を見ると思っていたよりも時間は進んでいなかった。



「さてここでテントを張ります。この森は日中は穏やかですが、日が落ちると下級悪魔の巣窟と化すので日暮までに拠点を築きます」



奥村先生の指示が飛び、男性人はテント張り等の力仕事を、女性人である私たちは霧隠先生の指示に従いテントの周りに魔法円を書くのと夕飯の支度をすることになった。
テント張りは賑やかに進んでいるようで、中心で皆の騒ぐ声が森に響き渡る。



「あはは、楽しそうだね!」

「…なにが?暑苦しいだけじゃない」

「ふふふ…男の子って不思議だよね」



私としえみちゃんと神木さんで魔法円を書いていく。…って言っても、ほとんど神木さんとしえみちゃんがやってくれてるんだけど。神木さんは伏し目がちに私としえみちゃんを見て、黙々と円を描いていた。



「おっ出来た〜?早いなァ優秀優秀♪」

「はい!」



二人のお陰で魔法円は思っていたよりも早く出来た。木の上に寝転がっている霧隠先生に報告をすると軽い感じで褒められる。私はほとんど何もしてないから何も言えないけど、神木さんは眉間のシワ全開で霧隠先生を睨み付けていた。



「じゃあ夕飯のカレー作り、魔法円みたいにちゃっちゃと作っちゃってね〜」



と、今度はゲームをし始める先生にはさすがに溜め息も出るだろう。用意されていた沢山の野菜とカレー粉を見て、これなら私もちょっとは役に立てるかなぁなんて思いながらそれを手にする。



「えっと、じゃあ、カレー作ろっか」

「…かれー?」

「……痛っ」

「………え、っと」



……どうやらしえみちゃんはカレーを知らないらしい。それに神木さんは包丁を握り締めて野菜とにらめっこ。そして指を切ったらしく親指から血が滲み出ていた。



「…じゃあ二人はサラダ作ってくれる?」



頷くしえみちゃんと神木さんを横目に、私は大量の野菜とにらめっこ。これは時間がかかりそうだ。だけど私が二人よりも出来ることって、きっとこれくらいしかなくて。ゴロッとしたジャガイモの皮を一つ一つ剥いていく。



「…あのさ、俺も手伝う」



そう言った奥村くんは包丁を握り、慣れた手付きでスルスルと野菜の皮を剥いていく。なんていうか、意外な特技を発見したような気持ちでいっぱいだった。普段の様子を見ているだけじゃ全く想像もつかない手付き。



「凄いね奥村くん」

「あ?…まぁ、うん。これくらいしか出来ることねぇし」

「これくらいって、料理上手な男の子はモテるんだよ」

「マジで!?」

「多分ね」



よしっ、と小さくガッツポーズをした奥村くんが気合いを入れ直してどんどん野菜に包丁を入れていく。森の中にカレーの香りが拡がるのはそれからすぐだった。


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