「皆さん今日から楽しい夏休みですね!」



ギリギリ間に合った集合時間。集合場所には奥村先生と霧隠シュラ、先生がいた。(先生と呼ぶには何か…なんか、ね。)爽やかな笑顔と声でそんな事を言ったのは奥村先生。楽しい夏休みですね!なんていう夏休みは私達には最初から存在しない。



「―――ですが候補生の皆さんはこれから“林間合宿”と称し…“学園森林区域”にて3日間、実戦訓練を行います」



ここにくるまで詳しい内容は知らなかったが、どうやら合宿のいうものをするらしい。前の時みたいに参加の是否を聞いてこない辺り、こんな私でも少しずつ祓魔師に近づいているということだろう。あんまり実感はないけど。



「夏休み前半は主に塾や合宿を強化し、本格的に実戦任務に参加できるかどうか細かく皆さんをテストしていきます。この林間合宿もテストを兼ねていますので気を引き締めていきましょう」



……―――夏休み前半は。
ということは夏休みの後半にも何かしらの訓練があるということだろう。他の皆は特に違和感もなくやる気をみなぎらせているようだけど、最初からその気でいたのだろうか。私にはそんな予定、全く無かった。学園の宿題や予習もしなくちゃいけなくて、その事ばっかり考えてた。また着いていけなくなるのかな、そう思うと大きな溜め息が漏れる。だけどそれを“仕方ない”と思う気持ちもどこかにあって、そう思うと前の私よりも気持ちに余裕を持てるようになったのかもしれない。なんかもういいや、って。本当はよくないのかもしれないけど、気持ちはあの時よりずっと楽だ。
一通り話を聞いて、取り敢えず荷物を準備するために軽く解散。



「林間合宿だってよ。楽しそうだな!」

「…楽しそう、とは思わないけど」

「なんでだよ」

「……色々あるんだろうなーって…不安だよすごく」



話し掛けてくれた奥村くんと同じテンションでは返せず、沈む私に彼は笑った。不安と言った私に「大丈夫だよ」とか「平気だって!」なんて言葉が返ってくる。呑気な彼を見ていると不安も馬鹿らしく感じる…ような、そうじゃないような。



「むーちゃん、あ、あの一緒に、行ってもいい、かな…?」

「あ、うん勿論!」



ニッコリ笑ったしえみちゃんに私も笑って返す。今日のしえみちゃんは、肩くらいまである髪の毛をサイドで緩く結ぶ髪型で、お花の髪飾りが彼女にピッタリでとっても可愛い。じっと見詰めすぎたのか、彼女の視線はあっちこっちを行ったり来たり。



「それ、可愛いね。似合ってる」

「……あ!ありがとう…!」

「ね、奥村くんっ」

「…あ!?…ああ、うん……いいんじゃねぇか?」



奥村くんの肩をポンッと叩くと、何とも分かりやすく慌てる彼。青春だ。それを羨ましいとは思わないけど、なんいいなぁとは思う。



「…お…お前もいいんじゃねぇの?」

「……え?どういう…」

「は!?べっ、別に変な意味じゃねぇからな!いっつも下ろしてるから、なんか涼しげだし」



今度は私に慌てる奥村くん。確かに、今日はさすがに暑いから私も髪を束ねてるわけだけど、まさか奥村くんにそんな風に言われるとは思ってなかった。だからなんか、恥ずかしいような…照れ臭い、そんな気持ち。取り敢えず「ありがとう」とだけ彼に伝えて、私たちはそれぞれに用意された大きなリュックを背負った。


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