セミの声が耳に届き、にじむ汗が鬱陶しい今はもう夏本番。そして今日で正十字学園の一学期が終わりを迎え、いよいよ待ちに待った夏休みが始まる。渡された成績表は散々だった。お母さんやお父さんはきっと笑ってくれると思うけど、自分の気持ちが何だかいたたまれない。分かってたけど、それでもやっぱりこぼれる溜め息は抑えられなかった。



「よぉ!」



長い階段の中腹に差し掛かったとき、後ろから声をかけてくれたのは奥村くん。軽く手をあげて私の居る場所まで小走りで駆け寄ってくる。いつからか彼はこうやって、私とまるで友達のように接してくれるようになった。正直とても嬉しい。
特に話すことはないけど、彼は嬉しそうにやっと夏休みだと笑った。ふあっと欠伸をする彼につられて私も口元を押さえる。



「奥村くん!むむむさん!」



今度は三輪くんの声。振り返ると三輪くんと志摩くんと勝呂くんがいて、立ち止まった私たちのところまで階段をかけ降りてきた。



「終業式終わったら“正十字中腹駅”に集合やろ」



そう言った勝呂くんに続けて三輪くんが一緒に行こうと声をかけてくれた。前を歩く三人の後ろを、私と志摩くんが並んで歩く。相変わらずニコニコした彼が嬉しそうに話しかけてくれる。



「みんな里帰りするみたいやなぁ」

「だね」

「むむむさんも帰りたかったんと違う?」

「…でも仕方ないし。志摩くんこそ帰りたかったんじゃない?京都…だっけ」

「京都かぁ…せやな、でもまぁ、こういうんもええんちゃう?」



普通の生徒は夏休みになる今日、もしくは明日から実家に帰る。中には寮に残る生徒もいるかもしれないが、ほとんどいないだろう。それに比べて祓魔塾に通う私たちは今日から塾の合宿に入る。休む間もない。もらった夏休みの宿題のことを考えると気分も滅入ってくる。



「早くしないと遅刻するわよ!」



少し前を歩いていた神木さんが振り返ってそう叫ぶ。
候補生になった今、なんとなく思うこと。訓練生だったあの頃よりも少しだけ、みんなの距離が縮まったような気がする。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -