「えーと?とりあえず“魔法円・印章術”と…?“剣技”もかよめんどくせ!…受け持ちますんでよろしくー」



動揺を隠せない私たちを代表して、先生、に質問をしたのは勝呂くんだった。



「先生…は何で生徒のふりしてはったんですか。あと魔印の前の担当のネイガウス先生は?」

「あ〜両方とも大人の事情ってやつだよ。ガキは気にすんな」



お前たちには関係ない、とそう言うかのように右手をひらひらさせる。大人の事情――とはきっと昨日のあの騒動の事なんだろう。多分、きっと、根拠はないけどそう思う。



「スンマセン……」



ゆっくりと開いたドアに、皆の視線がそちらに集中する。



「その…昨日あんま眠れなくて…授業中寝てたらHR過ぎても寝てて誰も起こしてくれなくて…」

「そんなとこで言い訳してないで入ってらっしゃい。怒んないから」



ハッと、驚いたように顔をあげる奥村くん。席につけと言われて素直に座ると、いつものダラダラした様子は無くすぐに教科書を広げる。しえみちゃんと話す様子を見る限り、昨日のような追い詰められた雰囲気はどこにもなく、晴れ晴れとしているように見えた。
会話をしながらしえみちゃんを通りすぎた視線はこちらに向き、私を捉える。目があって、それだけだけど何だか少し雰囲気が変わったような、そんな気がしたのは私だけではないようで。



「何か雰囲気変わったんやないか?」

「…何かあったんかもしれませんねぇ」



三輪くんはピンときていないようだけど、志摩くんと勝呂くんもそう感じている。



「どう思う?」



頬杖をついたまま奥村くんに向けていた視線を私に向けてきたのは志摩くんで。頷くわけでもなく首を振るわけでもない私の曖昧な返しに、彼は少しの間をあけて何かを言おうと口を開く。



「ふんじゃまー全員そろったとこでボチボチ授業始めるぞー」



途中で先生に遮られると、彼はそのまま視線を前に向ける。何が言いたかったのか、そんなこと私には解らない。私も特に気にしないまま霧隠先生の授業に耳を傾ける。
やる気を見せた奥村くんは結局いつもとは何も変わらなかったけど、それでも昨日のあんな姿よりもずっと彼らしいと、少しだけ安心している自分がいた。


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