あれは、何だったんだろう。あの青は一体、私は一体、何を見たんだろう。



「燐!」



しえみちゃんが奥村くんに話しかけた。奥村くんは傷だらけで、膝をついたまま下を向いている。私も、二人の元まですくんでいた足を動かした。
どうしたの、と、差し出したしえみちゃんの手を奥村くんが、触るな、と振り払う。ごめんなんでもない平気か、と声をかけられたしえみちゃんの表情は沈んでいる。男の子はしえみちゃんが見付けてて、ありがとうって、そう言って消えていったって。



「…な、」

「……みんなで遊園地、行くんだよね、絶対、約束したよね」



奥村くんの腕を掴んだ、この行動の意味は自分でもよくわからないけど。掴んでなきゃだめな気がして、なんだか凄く、不安になって。
彼は浮かばれない表情で相槌を打った。大丈夫じゃない、そんな気がした。彼に何が起きてるのかは私には分からないけど、こんなに弱々しい奥村くんを見るのは初めてでどう声をかけていいのかすらわからない。弱いなぁ私、そんな事を思うと私の気持ちまで一緒に滅入ってくる。



「しえみさん!むむむさん!」

「…雪ちゃん…!」

「大丈夫ですか!?」

「雪ちゃん…燐がケガしてるから手当てしてあげて…!」



走ってきたのは奥村先生や他の先生で、奥村くんの様子を見て表情を強張らせた。そしてもう一人。同じ塾生で、いつも真っ黒なパーカーをフードまで被って一番後ろの椅子に座っている人だった。



「遅ぇぞ雪男。お前が遅いからこっちが動くハメになったろーが」



座り込んでいる奥村くんの前に、いつも奥村くんが肩にかけている紅色の細長い入れ物を差し出す。口振りを聞くに、その人は奥村先生とは既に知り合いらしい。



「まあ、いい加減この格好も厭きた頃だったしな……―――アタシは上一級祓魔師の霧隠シュラ。日本支部の危険因子の存在を調査するために正十字騎士團ヴァチカン本部から派遣された上級観察官だ」



姿を現したのは、鮮やかなピンク色の髪を後ろに縛り、豊満な肉体を惜し気もなく披露しているタレ目美人な女性だった。水着なのか下着なのかは分からないけど、何だか目のやり場に困る格好をしている。それに難しい言葉をたくさん並べていて私にはイマイチわからなかったけど、彼女もエクソシストだと言った。
……やっぱり私には、難しいことは何一つわからないけれど。


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