本来の目的である霊の捜索をしようと、個人的な会話はやめて左右を見渡す。普通の静かな遊園地だけど、こんな静かな遊園地なんて来たことないから何だか少し怖いような、そんな気もしなくはない。



「声…」

「?…声?」

「…こっちだ!近くにいる!」



奥村くんは突然駆け出した。私としえみちゃんは戸惑うようにその後を追い掛けて、辿り着いたのはメリーゴーランド。止まったままの一匹の白馬の上には、涙をボロボロ流しながら泣いている小さな男の子がいた。…――足は、ないけど。



「どうしたの?…どうして泣いてるの?」

「…おい悪魔に話しかけんな」



しえみちゃんが男の子に話しかけると、奥村くんがそれを制止する。男の子は幽霊、だけどそれが悪魔だっていう事には私の頭ではどうしても繋がっていかない。特にこんな小さな男の子だと尚更。両手で止めどなくこぼれ落ちる涙を拭いながら、嗚咽を漏らしながら子供は泣き続ける。



「いつまでもめそめそしてんじゃねぇ!」



そう、怒鳴ったのは奥村くんだった。私もしえみちゃんも、勿論男の子だってビクッと肩を跳ねさせる。すると男の子は余計に声を上げ泣きじゃくりったまましえみちゃんに抱き付いた。



「…ぼくは…ずっとびょうきで…びょうきがよくなったらこのゆうえんちあそびにこようって…お父さんとお母さんとやくそくしてたんだ…でもぼくは死んじゃったから…もう……もうだれともあそべないんだ!」



ああそうなんだ、なんだろうなんて声をかければいいんだろう。……そっか、寂しかったんだね、なんて。いい雰囲気になっていたから油断していたけど。



「うっせ〜ババァ!!」



と。しえみちゃんの胸にセクハラした男の子は、悪戯っ子の表情でそのままどこかへ飛んでいってしまった。奥村くんもその勢いのまま猛ダッシュで追い掛けていく。私としえみちゃんもその後を追い掛けていくがこの広い遊園地の中じゃ探すのも大変だ。そんなに遠くに行ったわけじゃない、と思うけど果たして見付かるのかどうか、それはわからない。
奥村くんは先生に連絡をしてくれるって言ってたから、私としえみちゃんは取り敢えず二手に分かれて男の子を探すことにした。
傍には大きなジェットコースター。どこにいるんだろうって、キョロキョロ辺りを見回す。だけどどこにも男の子の姿は見当たらなくて小さく溜め息を吐くと、突然頭の上の方から凄まじい音がして、見上げると何かの破片が落ちてくる。間一髪、それらは私のすぐ傍に落ちた。…――何かが起こってる、それだけはその瞬間にわかる。ガタンと音がして後ろを振り向くと、離れたところに背中を向けてしゃがみこんだしえみちゃんがいて、



「ガアアア」



それから…――それから。
誰かがいて、青い、何かがいて、飛びかかって、青い炎に包まれて。まるで地震のように地面が、揺れる。ゆれる。


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