空から降り注ぐ雪は、止むことを知らないかのように視界を白く染めてゆく。


「こんな所で何をしている」

「雪だなぁと思って」


ぼーっと、白く染まる庭をただ眺める私に声をかけてくれたのは一くんだった。
新選組に保護されてから、毎日を何事もなく平和に過ごしている。
だからと言って何もしてないわけじゃくて、屯所の掃除とご飯を作ることくらいはしている。
シンプルな料理が多いから、教えてもらえば私にもすぐ出来るようになった。
それから、最初は不審がっていた新選組の皆も良くしてくれて、不自由はない生活も送れている。
平成時代に比べればやっぱり不自由だけど。


「寒くないのか」

「寒いよ」


へらっと笑ってみせると、呆れたように私の隣に腰を掛ける。
一くんはあんまり話さないけど、彼は何かと私のことを気にしてくれる。
最低限の言葉しか話さないけれど、彼の纏っている雰囲気は何だか凄く居心地がいい。


「一くんは寒くない?」

「毎年の事だ、もう慣れた」

「そっか」

「むーのいた世界もこうではなかったのか?」


少し考えてみる。
確かに雪は降ったけど、地球温暖化の影響もあってかここまで降る事はなかったしこんなに綺麗でもなかった気がする。
それに室内にはホットカーペットとかストーブとか暖房器具が充実してたし、服装だってもっと厚着だったし…と、私が並べる言葉をじっと聞いている。


「皆きっと驚くよ。出来ない事なんてないんじゃないかなぁ」

「そんなに進んでいるのか?」

「うん。空も飛べて雲の上にも行けるし、もう月にだって行けるんだよ」


驚いたような表情を浮かべて、未だ白が降り積もる景色をじっと眺めた。
江戸時代の人たちは、そんな未来はきっと想像もつかないんだろうなぁ、と思う。


「時代は変わるのだな」


ポソッと呟いた彼の言葉が、白に響いて聞こえた。
見せてあげたいとも思うけど、それはきっと叶わない願いで。
京都の街並はそれ程変わらないのかもしれないけど、平成の東京や大阪の街並を見た彼らが喜ぶのか悲しむのかは私には分からない。
だけどこの景色を大切にしたいと、今の私ならそう言える気がする。


「風邪を引いては元も子もない。そろそろ部屋に戻れ」


立ち上がった一くんを見上げて頷いて私もゆっくりと立ち上がる。
吐く息すらも真っ白で、足なんか冷えきって感覚を僅かに感じる状態。
よろめく私に差し出してくれた彼の手は暖かくて大きくて、淋しかったわけでも不安だったわけでもないけど何だか凄く安心した。


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