「おいむー、塾いくぞ」
「燐。ごめん私今日、日直だった」

放課後、人もまばらになった教室に、赤い竹刀袋を下げた奥村燐がやってきた。

周りのみんなはちゃっちゃと鞄の中身を詰め込んでさっさと帰って行く。私はたらりんたらりん片付けながら、空いている片手で日誌に今日の出来事を乱雑に書き込んだ。

「お前、女の癖に字ぃ汚ねえのな」
「丁寧に書いたら多少はマシだっつの」
「ほんとかよ」
「嘘だけど燐には言われたく無いな」
「嘘なのかよ!ってかどういう意味だコラ」

喚く燐をスルーして、鞄のチャックを閉める。ついでに燐にデコピンして、燐のお口もチャックする。

デコを両手で押さえ、不機嫌そうにブツブツ呟く燐を尻目に教室を見渡す。

気付けば既に教室はガランとしていて、残るのは私たち2人だけだった。

「燐、窓の鍵閉めてきてー」
「何で俺がそんな事しなきゃなんねーんだよ」
「ええからはよ行けや」
「……」

勝呂くんの真似をしてみたら、彼は何だかビミョーな(詳しく言うと珍獣を見たような)顔をして私を見つめた。

そんな見つめたら、穴があいてまうわ、燐よ。

「お願いだってば。日誌書いて窓閉めたら、塾に行けるからさ」
「ジュース一本、貸しだからな!」
「ケチくさ!?」
「良いからさっさと書けって!遅刻したら雪男に課題増やされるんだからな」
「まじか!」
「まじだ!」

燐が私の前をすり抜けて、窓を閉めて行く。

がりがりと残念な筆跡で日誌を書く…と、最後の欄で手が止まった。

今日いちばんの出来事は?
今日のまとめをどうぞ!

おのれ担任め。
そんな事知ってどうするつもりなんだ。

「おおい、まだかー?」

顔を上げると、赤い夕焼け空を背景に燐が待っていた。青玉みたいな瞳、林檎みたいな空。

ふと思い立って、最後の欄に2行、ガリリと書きなぐって日誌を閉じた。

「かけた」
「おう。じゃ、行くか!」


今日いちばんの出来事は?
今日のまとめをどうぞ!

燐が迎えに来てくれた。
林檎が食べたくなりました。






――――――

こちらも1925のきりん様より!
わ、私には書けないすっごい良い感じの距離感…!何でも言えるような関係性って素敵だなぁ…きゅん。
ありがとうございましたっ♪


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