「あ、雨じゃん」
「本当だね…」
「まじかよ! 傘持ってきてねーよ俺」

それはとある日の事だった。
塾のない日、下駄箱の近くでたまたま出会った3人は、昇降口の向こう、しとしとと降り出した雨を見つめていた。
ちょうど帰ろうとした瞬間に振り出した雨。
こうなれば話題は自ずと一つになる。

「むー、お前雨女なんじゃね?」
「いや、私の性格は雨じゃないだろーよ」
「俺だってちげぇよ」
「なら…」
「あー…」
「「…………」」

むーも燐も、悲しいかな脳みそスカスカなだけあってテンションは底抜けに明るい。
それこそ晴れを呼び寄せるんじゃないかという程に。そうなってしまえば、残るのは雨どころか吹雪を呼べそうな彼のみ。というか、すでに時々ブリザードを起こしてる気もするのだが。
とりあえず無言の中で燐と以心伝心したむーは、黙ったまま2人して雪男のほうを見た。

「…何なの、2人して」
「いやぁ…ねぇ?」
「あぁ…お前ならぽいと思うわ、雪男」
「…2人とも…僕を怒らせたいの」
「嘘ですよごめんなさい!」
「そーだぞお前が雪男…じゃなくて雨男だなんて欠片も思ってねぇから!!」
「わぁぁぁああ、バカ燐!」
「…ふうん」

そんな事考えてたんだ、とブラックな笑顔の彼は、鞄から一つの折りたたみ傘を取り出してこれ見よがしにちらちらと振ってみせる。

「そんな風に以心伝心できちゃうくらいに仲いいなら、僕は拗ねて1人帰ることにするよ」
「え、拗ねてたの?」
「拗ねてたのかお前…」
「え、いや違うから」

言葉のあやでしょ、とむくれる雪男に意外に子供な一面を見て、むーは内心びっくりした。何だか嬉しい気もする。
感情そのままにスキをついて雪男から傘を奪い取る。

「あっ!」
「ふっふーん! 油断するからよーん」
「むー…お、お前、死ぬ気か…!」

きゃらきゃらと笑うむーに雪男は頬をヒクつかせ、燐は顔を青くさせる。
そんな2人にさらに笑うと、彼女は傘をバサッと開いて雨の下に飛び出した。
傘を叩く雨の音が低く軽快に響く。

「三人でね、帰ろうよ」
「へ…って相合傘じゃねえかよ!」
「兄さん…三人だから」
「あ、あぁ、そうか…」
「そうそう、相相合傘だよ」
「意味わからないから!」

ぎゃあぎゃあ騒ぎながら、それでも2人は傘の両側に入ってゆく。
ふっと片割れのほうを見遣った燐は、意味深に見てくる雪男に首を傾げた。
何だか良くわからない空気が漂ってる気がしないでもないが、こういうのも悪くないなと思ったむーだった。


雨の日に


(雨の日に相相合傘)
(いつか相合傘してーなー…)
(いつか相合傘したいな…)






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1925のきりん様よりいただいてまいりました(*^^*)
奥村兄弟でした!うふふ…なんか、愛されてる感に取り敢えずにやけてます。私のサイトにはあんまりないからなぁ…(笑)


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