杜山さん改め、しえみちゃんの着替えを済ませて急いで集合場所に向かう。そこにはもうみんながいて、私たちが遅れたことが見てとれた。みんな制服姿のしえみちゃんに驚きを隠せないでいる。皆は「かわいい」とか「似合ってる」とか誉め言葉を幾つも紡ぎ、しえみちゃんも嬉しそうに笑っている。でも可愛い、本当に。ニコニコしてる男の子の気持ちも分からなくはない、かもしれない。



「えーでは全員そろったところで組分けを発表します。三輪・宝、山田・勝呂、神木・志摩、それから奥村・杜山・むむむ…ここは三人で活動してもらう」



隣にいたしえみちゃんが奥村くんに笑いかけ、それから照れ臭そうに私にも笑いかけてくれた。よろしくね、って小さく声をかけるとまた嬉しそうに笑う。癒されるような可愛い笑顔に、私の頬も自然とゆるんでいく。



「今回はここ、正十字学園遊園地――通称“メッフィー・ランド”内に霊の目撃・被害の報告が入ったため、候補生の皆さんにその捜索を手伝ってもらいます」



霊の被害…とは言っても小さな男の子のイタズラ程度のものらしい。今はその程度だけどこのままだと悪質化するかもしれない、とのこと。日暮れまでの発見を目標として、これからその小さな霊を探すのだ。



「――以上、解散!」



一通りの説明を終えた奥村先生のその声を合図に捜索がスタートした。
張り切った様子で前を歩いていくしえみちゃんに続くように、私と奥村くんも歩いた。



「張り切ってるね、しえみちゃん」

「あ?おーそうだな……って、お前らいつの間にそんな仲良くなってんだ?」

「あ、うん………友達にね、なったんだ」



あの会話を思い出すだけで胸が温かくなる気がする。名前で呼びあうような友達なんて久々で、緩む口元を隠すように少し下を向いた。



「燐!むーちゃん!聞いてる!?」

「ごっ、ごめ……し、しえみちゃん…?」

「…し、しえみ!?どーしたすげぇ顔ブッサイクだな!!怒ってるのか…!?」



振り返った彼女は、ほっぺをめいっぱい膨らませて顔に力を入れている。驚いたけど、真っ赤な顔で話すしえみちゃんはやっぱりしごく可愛くて思わずまた口元が緩んでしまう。



「わ…私実は遊園地ってすごく憧れてたんだ…!でも子供の頃は大勢の人が苦手だったから遊園地なんてとんでもなくて…でも今の私なら大丈夫だと思うの!普段ならお店も乗り物もにぎやかで楽しいんだろうなぁ…今度絶対、任務と関係なく遊びに来よう!」



拳を硬く握りしめた彼女は、決意したようにそう言った。そういえば遊園地なんて、私ももう随分と遊んだ記憶がない。



「じゃ…じゃあ今度一緒に遊びに来よーぜ!」

「うん!」

「ま、まじで!?おっおっおっお前、絶た…」

「むーちゃんも一緒に、絶対来ようね!」




きゅっと私の手を握りしめたしえみちゃん。後ろにいた奥村くんの右手が虚しく宙を舞い、言葉を呑み込んで行く宛のないその手はポリポリと頭を掻いた。
よし!なんて気合いを入れ直したしえみちゃんは再び前を歩き始める。



「…なんかごめんね」

「はっ!?…あ、いや……」

「奥村くんの邪魔しないようにするからさ」

「いや、いんだよ、邪魔………つーかさ、俺のことも燐でいいよ」



…なんか、よく、わからないけど。サラッとそう言った彼の姿を眺めていると、なんだよ、なんて今度は奥村くんが訝しげに私を見た。


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