「あ…あの…私に制服の着方を教えて!」
祓魔師候補生になった私たちに集合がかかったのは今朝のこと。授業を終えて集合場所に向かうため学園を歩いていた私に声をかけてきた彼女は、杜山さんだった。
杜山さんは塾には通っているけどこの学園には通っていない。制服の着方を聞くためにわざわざここまで来たのだ。っていうか制服の着方、って、普通に着るだけなんだけどな…。
「こういう服、着ないの?」
「和服ばっかりだから…でも和服は任務に不向きだからって、理事長に支給してもらったの」
何枚か重ねて着られていた和服を脱いでいく。杜山さんは私に対して凄いねぇと言ったけど、私にしてみればこんな複雑な着物を私服にしてる杜山さんの方が凄い。制服を着るのって私にとっては普通のことだから、褒められる理由もわからないんだけど。
不器用な手付きでシャツのボタンをかけていく。上まで止まったのを確認して次はスカーフ。巻き方に決まりはなくて、どうしたい?って聞くと戸惑うような反応が返ってきた。そうだよねそんなのわかんないよね、こういう格好も初めてなのに。
「あっ…あの……」
「…どしたの?」
何故だか顔を、耳まで真っ赤にしてもじもじと視線を移動させている。
杜山さんの首にスカーフを巻いて、襟の下にそれを隠す。どうしようかなぁなんて迷うほど私もお洒落な巻き方なんて知らない。私と同じでいいかなって、苦しくないくらいにキュッと結んだ。
「わ、私と友達になってください!!」
キョトン、と。思わず手が止まってしまった私に彼女は不安そうな表情を浮かべる。――改めてこんな風に、友達になろうって誘いなんて、初めてで。
「わ、私で良かったら……」
キュッと、綺麗に結べたリボンのかたち。杜山さんはキラキラした瞳で私を見ると、真っ赤な顔をくしゃっとさせて笑った。
ドキドキ。私だって、ここにきて友達なんて初めてで、わかんないけど、なんかくすぐったい気持ち。
「あ、あのじゃあ、むーちゃんって、よ、呼んでいい?」
「え、あ、じゃあ私も、しえみちゃんって呼んでいい?」
まるでそういう人形みたいにコクコクと首を縦に振る彼女に、リボンお揃いだね、って言うとまた彼女は嬉しそうに笑って見せた。
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